■ 土地の予算不足で困っている人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
私は仕事柄、マイホームを建てる土地探しをされている方とお話しする機会も多いのですが、
「立地条件を重視すると建物まで予算がまわらない」
「希望の地域は相場が高すぎて手が出せない」
「売り出されている土地が少なすぎて選べない」
といった悩みを抱えている方が多いように感じます。
もちろん、家族の暮らしの起点となる土地を探しているのですから、慎重になるのは当然ですし、少しでも満足度が高い土地を手に入れたい気持ちは誰しも同じでしょう。
しかし、ただ悩んで立ち止まっていても、土地探しが進展するわけではありません。
というのも、土地探しに行き詰った時は、少し視点を変えたり視野を広げることで、思わぬ掘り出し物が見付かることがあるんです。
例えば、今回紹介する「旗竿地」に目を向けてみるのも解決法の一つと言えるでしょう。
今回は、道路から奥まった位置にある、「旗竿地」という通路の長い土地ならではのメリットやデメリットに触れながら、旗竿地を購入する前に知っておきたい失敗例や注意点についてまとめました。
旗竿地とは?
土地探しをお願いしてる不動産会社から、「敷延だけど出物の土地が見つかった」って連絡があったんです。
ところで、「敷延」ってどんな土地なんですか?
不動産会社の言う「敷延」とは、一般的に「旗竿地」と呼ばれている土地のことです。
面積の大きな土地を戸建住宅に適した大きさに区画分けした際に生まれやすく、独特の形状が印象的ですね。
「旗竿地」とは、上から見た土地の形状が旗竿に似ていることから付いた名前で、道路から奥まった位置に敷地の大部分があり、そこに到るまでに長い通路を要する土地のことです。
不動産業界や建築業界では、建物を建てる敷地に繋がる通路が延長された土地なので、「敷地延長」や「敷延(しきえん)」と呼ぶこともあります。
「敷延」って、「旗竿地」のことだったんですね。
奥まった土地に家を建てるって、いかにも窮屈そうで、いいイメージないんですよね・・
たしかに、間口が広くて形の整った「整形地」に比べると、「旗竿地」を敬遠する方は多いですね。
ですが、旗竿地ならではのメリットを活かして建築プランを工夫することで、整形地にはない満足感を実現したケースも珍しくありません。
せっかくの掘り出し物を見逃さないためにも、まずは旗竿地ならではの特徴を知っておきましょう。
購入する前に知っておきたい旗竿地の特徴
土地の売買契約を交わした後に買主の都合でキャンセルすると、「手付金の放棄」という金銭的に大きな痛手を被ることになります。
しかし、土地の購入が決断できないと、せっかくの掘り出し物を見逃してしまうだけでなく、いつまで経ってもマイホームを手に入れることができません。
的確な判断を下すためにも、メリットとデメリットを理解し、正しい知識を備えておきましょう。
メリット
◇奥まった位置に建物を建てることになるため、道路から建物の距離が離れ、プライバシーを確保しやすい
◇同エリアの整形地に比べると割安で手に入ることが多く、通路部分の土地が実質無料だったり、地域相場の2~3割引きも珍しくない
◇通路(敷地延長)部分の広さも建ぺい率や容積率に算入できるため、土地を有効活用しやすい
◇建物の外観が目に触れにくいため、屋根や外壁などの外観に関するコストダウンを図りやすい
デメリット
◆敷地内の気配が分かりづらいため、防犯面に不安が残り、念入りな防犯対策が必要となることが多い
◆近隣の状況により、陽当りや風通しの面で不利になりやすく、快適に暮らすためには2階にリビングを計画する、などの工夫が必要
◆通路部分の幅によっては、大きな資材の運搬や重機の搬入が困難いなるため、解体工事や建築工事に関する費用が割高になってしまう
◆前面道路と通路部分の接道距離が2m以上ないと再建築できないため、リフォームに頼らざるを得なくなる
◆給排水工事や電気工事など、インフラに関する工事費が割高になりやすい
◆自治体によっては、防火基準や建ぺい率・容積率に規制を設けていたり、消防法の規定により3階建の建物が建築できないことがある
◆通路部分に当たる土地の有効活用が難しい
◆整形地に比べて人気が低いため、売却しづらい傾向がある
こうやってメリットとデメリットを見比べてみると、旗竿地にも魅力的な部分は多いですね。
だって、相場よりも安く土地が手に入るなら、高額で諦めていた地域にマイホームが建てられるかもしれませんし・・
たしかに、近隣の相場より安価で土地が手に入るのは、旗竿地の大きなメリットの一つですね。
私が今まで担当させてもらったお施主さんの中にも、「予算不足で注文住宅を諦めていたが、割安な旗竿地を見つけて理想のマイホームが手に入った」と、満足された顔でお話くださった方がいらっしゃいましたよ。
そっか!相場よりも安く土地が手に入るんだったら、工夫次第では建売住宅並みの価格で注文住宅が手に入れられることもあるんだ!
掘り出し物を見つけるには、広い視野で土地を探すことが大切なんですね。
とはいっても、旗竿地は価格面でのメリットが大きい反面、敷地形状ならではのデメリットもあります。
それに気が付かずに土地を購入してしまい、「予算オーバー」や「大失敗」なんてことにならないように注意してくださいね。
と、こうやって言うと少し怖いかもしれませんが、事前に知っておけば回避できるデメリットも多いので、旗竿地での建築の注意点をご紹介しましょう。
旗竿地での建築計画の注意点ーまとめ
家づくりでは、すでにマイホームを手に入れた方の意見が非常に強力な武器になります。
中でも失敗例を知っておくことで避けられる事例が多い、というのも注文住宅ならでは特徴です。
さらに、ご自身のライフスタイルや価値観と照らし合わせておけば、より精度の高い家づくりが進められるでしょう。
旗竿地での建築でよくある失敗例
- 通路部分の幅が狭いため、自動車の駐車が難しい
- 通路の余剰スペースが狭く、自動車の乗り降りや自転車の出し入れがしづらい
- 通路の奥に停めている自動車や大型バイクが使いづらい
- 隣家までの距離が短いので、陽当りや風通しが悪い
- 隣家の窓が近く、隣人の視線が気になる
- 大型の重機やトラックが利用できず、工事費が高くついた
- 通路が長いため、土地の高低差に気が付かず、地盤の高さ調整の費用が必要になった
- 建物に引き込む電線が隣家の敷地内を経由しないように、電線引き込みポールが必要になった
- 防犯対策に必要な費用が意外と高かった
- 通路部分の外構工事費が高くつくと思わなかった
- 通路部分が意外と暗い
旗竿地での失敗例を見てみると、通路の幅や長さに関わることが多いですね。
旗竿地購入の際に、前もって気付けるか心配だなぁ・・
旗竿地では土地形状の特徴から、通路部分に駐車場を計画するケースが多いのですが、ご自身のライフスタイルと照らし合わせて、どのくらいの幅があれば不便を感じづらいかなど、通路部分の使い勝手に注意しておく必要がありますね。
一般的な駐車場では、「自動車の幅+乗り降りに必要な幅(70㎝程度)」が最低限必要と言われています。
しかし、旗竿地では自動車の乗り降りに必要な幅が日々の通路になるのですから、もう少し余裕を持っておきたいものですね。
家づくりって、住み始めてから気が付いては手遅れなこともありますよね・・
易々と買い替えられる物じゃないですし、ずっと不便を感じるのは避けたいです。
特に寸法が問題となった失敗は、図面の上だけでプランを計画すると陥りやすいんです。
不動産の広告によっては、実は通路が狭いことを勘付かれないように、幅の狭い自動車を図面に書き込んでいることもありますからね。
エ~ッ!図面で確認すれば充分ってわけじゃないんだ!
それじゃあ、何を信用すればいいんですか・・
図面だけに気を取られず、実際に現地へ足を運び、メジャーを使いながら寸法を体験すると分かりやすいので、おススメです。
さらに、図面に寸法を入れておいてもらうと、ちょっとした時に気が付きやすいので、より安心だと思いますよ。
あと、目隠しフェンスの設置やコンクリートブロックなど、外構計画による通路幅の減少にも注意しておきましょう。
ホント、家づくりって奥が深いですね・・
土地の購入を決断する際に、自分達の力だけでチェックしきれるか心配だなぁ・・
では、土地探しと並行してマイホームを建てる住宅会社にも目星をつけるように行動してみてはいかがですか?
土地の売買契約を交わす前に、「その土地にどんな建物が建てられるのか」を建築のプロに相談できる状況を作っておくと安心ですよ。
たしかに、住宅会社に土地の相談ができれば頼もしいですね!
土地探しにばかり気を取られていましたが、これからは住宅会社探しにも力を入れるように心掛けます。
いい住宅会社を見つけることができれば、家づくりに具体性が増すので、計画を進めやすくなるというものです。
それに、早い段階で情報収集しておけば、決断を迫られた際にも余裕が生まれるので、間違った選択を防ぎやすいですよ。
■ 土地探しで的確な判断を下すためには、メリットやデメリットを知っておくことが大切
■ よくある土地での失敗例を知っておけば、自身の失敗を防ぎやすい
■ 土地の売買契約を交わす前に住宅会社に相談できれば、安心が得られやすい