※この記事では、注文住宅の建築請負契約(建築工事請負契約)でよくある失敗・トラブルを防ぐために役立つ、「契約を交わす前の注意点」「確認しておきたいチェックポイント」について詳しく解説しています。
マイホームを建てる住宅会社が決定したら、いよいよ建築請負契約を交わすことになります。
しかし、ここで焦りは禁物!
十分確認せずに建築請負契約書にサインしてしまい、「後戻りできなくなる」のは注文住宅でよくある失敗なんです。
こんにちは!建築士&FP技能士の清水裕一(しみゆう)です。
注文住宅で契約を焦っても、ほとんど施主側にプラスはありません。
建築請負契約を交わす前に必要な準備をすませ、納得のうえで契約にのぞむことが、家づくりを失敗しない秘訣ですよ!
■ 住宅会社との契約で失敗・後悔したくない
■ 建築請負契約書へサインする前に不利な点がないか確認しておきたい
建築請負契約(建築工事請負契約)とは
請負(うけおい)とは、当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することを内容とする契約。
日本の民法では典型契約の一種とされ(民法632条)、特に営業として行われる作業又は労務の請負は商行為となる(商法502条5号)。
注文住宅の建築請負契約で最も注意しないといけないのは、成果物(完成したマイホーム)の実物を見ることなく、契約を交わさなければならない点です。
一般的な買い物のように、事前に完成した商品の状態を目で見ることができません。
そのため、「注文者(施主)の想像」と「請負人(住宅会社)の提供する建物・サービス」のギャップがトラブルの原因となりやすく。
ギャップの大きさが、マイホームの満足度に大きな影響を与えます。
施主の想像を上回る建物が完成すればよいのですが・・
もし想像を下回っていたら一大事、取り返しのつかない失敗を味わうことになりかねません。
そんな失敗を防ぐためには、契約内容をしっかり把握しておくこと。
曖昧な建築請負契約で計画を進めないことが重要です。
建築請負契約書にサインする前のチェックポイント8選
建築請負契約書にはさまざまな取り決めが記載されています。
不要なものは何一つありませんが、
- 「これだけは外せない」重要度の高い事柄
- 「ほとんどの人は気付かない」見逃しやすい事柄
といった、とくに注意しておきたいチェックポイントがいくつかあります。
もちろん、サインの後に気付いても手遅れ・・契約後では取り返しがつきません。
「注文住宅を建てるのが初めて」だからといって、大目に見てくれることもありません。
残念ながら・・住宅会社との契約を交わす前に解決しておかないと意味がありません。
建築請負契約で後悔しないためにも、必ず契約内容を確認しておきましょう。
値引き・コストダウンの申し出は契約前に!
もし建物の値引き・コストダウンを望んでいるなら、必ず建築請負契約を交わす前に住宅会社の担当者に申し出ましょう。
何故かというと、住宅業界では一つ一つの工事内容の詳細でなく、建築工事全体の利益を重視します。
そのため、一部の工事が赤字でも、契約全体で利益が出ていれば問題ないと考える住宅会社がほとんど。
とはいっても、あなたの申し出が住宅会社の利益の大部分を削るのであれば、実現が不可能なのはもちろん。
そもそも、自社の利益減少に喜んで協力するハズがありません。
ですが、これが契約前となれば話が変わる可能性が高いんです。
「我社と契約してくれるなら、少しくらい利益を削っても・・」といった風に考える住宅会社が少なくありません。
間取り・仕様が未決定な状態の契約はNG
値引き・コストダウンと同様、建物の「間取り」や「仕様」を変更したからといって、住宅会社の手間は増えても、利益が増えるとは限りません。
そのため、建築請負契約を交わした後の間取り・仕様の変更には、積極的でない住宅会社が少なくないんです。
建物の打合せ回数・時間が増えると、住宅会社の担当者の負担が増加します。
仕事の効率化を求めるがあまり、本当は実現可能な要望にも『技術的に難しい。』『当社では取り扱っていない』といった返答で断わられることがあるんです。
仮に実現できたとしても、「相場よりも高い費用を請求」されることも珍しくありません。
住宅会社によっては、『仮契約後でないと詳細な打ち合わせはできません。』と、「仮契約」という名の「本契約」を迫ったにもかかわらず。
『契約を交わしてしまえばこっちのもの。』と言わんばかりに、「間取り・仕様の変更を積極的に受けてくれない」なんてことも。
万が一、思い描いていたマイホームが実現できなくなっては大変。
契約前に間取り・仕様を決定しておけば「総建築費が確定」するので、予算オーバーの心配もなく、資金計画にそった家づくりが可能となります。
「外壁やキッチンの色」「壁紙の種類」など、建築費用に関わらない部分の仕様決定については、必ずしも建築請負契約を交わす迄に決める必要はありません。
とはいっても期限があるので、住宅会社の担当者に「何がいつ迄なら変更可能か」確認しておくと安心ですね。
設計監理業務委託契約の有無の確認
住宅のような規模の小さい建物の設計・監理については、口頭での重要事項説明が義務付けられていますが、書面での設計監理業務委託契約は義務付けられていません。
そのため、設計監理業務委託契約を交わさない住宅会社も。
確かに、契約を交わさなければ印紙費用が必要ないので、コストダウンもできるのですが・・
万が一、建物の設計・監理に関わるトラブルがあった際、住宅会社側の不手際を立証することが非常に難しくなってしまうんです。
あげくの果てに、「言った、言わない」といった水掛け論が交わされた結果、施主が泣き寝入りなんてことがよくあります。
そうならないためにも、設計監理業務委託契約は書面で交わす様に心掛けてくださいね。
工事の出来高以上に建築工事費を支払わない
多くの住宅会社では、建物の完成状況に合わせて複数回に分けて建築工事費を支払う、「出来高払い」と呼ばれる方式を採用しています。
(一部の大手ハウスメーカーでは、建築工事費の支払いを建物引渡し時に一括で行えることも)
建築工事費の出来高払いでは、「建築工事請負契約時に10%」「建物着工時に30%」「上棟時に30%」「引渡し時に30%」といった割合が多いのですが、
中には、契約時に50%以上の支払いを求める住宅会社がいます。
ここで注意しておくべきは、建物の工事途中で「住宅会社が倒産」「意見の相違などで工事が中断」した時のことです。
このような事態におちいってしまうと、「支払い済みの建築工事費」が返還されることはほとんどありません。
そのうえ、工事中の建物を放っておけず、別の住宅会社に工事を引き継いでもらうための追加の工事費用が必要になってしまいます。
マイホームの工事を進めるために予定以上のお金がかかるとなると、資金計画が大幅に狂ってしまいますし、住宅ローンでは資金調達が難しいかもしれません。
最悪の場合、『マイホームは完成せずに借金だけが残ってしまった・・』なんてことに。
こんなトラブルを未然に防ぐには、工事の出来高を超えた支払いをしないことが重要。
出来高以上の支払いをしていなければ、万が一住宅会社が倒産しても費用的な損害を最小限におさえられるので、『資金計画に行き詰まってしまった・・』なんて心配もありません。
そのためには、「支払い済みの金額」と「工事の出来高」との剥離を小さくする必要があります。
出来高払いのタイミング・金額について、工事請負契約の前に住宅会社と交渉する事は、思わぬトラブルに巻き込まれないためにも非常に大切です。
出来高払いの目安としては、住宅完成保証制度に加入していれば保険で賄える範囲であれば問題ありません。
もし、住宅完成保証制度に加入していない場合は、「終わっていない工事に対して先払いしない」といったものがよいでしょう。
サービス・約束事は必ず書面に残す
住宅会社の担当者と商談・打ち合わせを進めていると・・
『壁紙のグレードアップをサ―ビスします。』や『当社の建物は長期優良住宅です。』などといった、「サービス」や「建物の性能」などの約束事をすることがあります。
ですが、家づくりではこの様な約束事のトラブルが絶えません。
トラブルの原因は、「都合が悪くなって誤魔化そうとしているもの」「お互いの意思の疎通がとれておらず勘違いしているもの」など、さまざま。
営業マンの「契約して欲しいがための、誇大表現」であったり、施主と担当者の「家づくりの知識差による思い込み」だったりします。
家づくりでは、約束事を明確にしておくことが重要です。
しかし、単に約束事を明確化していても、後で確認できなければ「言った、言わない」というトラブルに発展してしまうのは変わりません。
なので、後で約束事を確認できるように書面に残すようにしましょう。
実は、住宅会社も「言った、言わない」というトラブルを避けたがっていることが多いんです。
しっかりした住宅会社なら、施主が求めなくても、約束事は書面で残すようにしています。
「着工日」と「引渡し日」を明確にする
建築請負契約書では、「着工費」や「引渡し日」が「〇年〇月吉日」という様に記載されていることがあります。
ですが、具体的な日付が記載されていないと「現在の住居の契約期限」や「新居への引越しの段取り」などに困ってしまうかもしれません。
それに、万が一建物の引渡しが遅れてしまったら、建築請負契約約款にある「建物引渡し遅延時の賠償請求」の基準日が曖昧になるので、思わぬ被害を受けてしまうことも。
その様なトラブルを回避するためにも、建物の「着工費」と「引渡し日」は明確化して契約書に記載してもらいましょう。
アフターサービスの「内容」と「保証期間」は書面で確認
建築請負契約では、建物の完成度ばかり気にしがちですが、建物の引渡し後のことも考えておくことが大切です。
(どんなに腕の良い住宅会社でも、住み始めてから不具合が起こらないとは限りません)
必ず、契約前にアフターサービスの「内容」や「保証期間」の確認をしておきましょう。
アフターサービスについても、口約束では後で「言った、言わない」というトラブルが起こりかねませんので、
必ず、書面にしてもらって下さいね。
竣工図には「電気配線図」「給排水設備図」「ガス設備図」が必須
気付きにくいのが、竣工図(しゅんこうず)と呼ばれる建物の完成図面に関することです。
建物の「平面図」や「立面図」「配置図」はもちろんですが、「各種伏せ図」などの構造図までは、ほとんどの住宅会社でも引渡し図面の中に入っています。
※設計図面の多くは建築確認申請書に添付されています
しかし、「電機配線図」や「給排水設備図」「ガス設備図」といった設備関係の図面が引き渡されないことが多いんです。
設備図が無いと、新居で暮らし始めてから困ることになるかもしれません。
マイホームに住み始めると分かるのですが、「不具合の補修」や「リフォーム」などの際に設備図が無いと、工事が思うように進まないことがあります。
というのは、設備の「配線」「配管」には決まったルートがなく、「施工業者」や「職人さん」が現場に合わせて決定することも多いので、後で見つけるのが困難なことも。
マイホームを建ててくれた「施工業者」や「職人さん」が分かればよいのですが、もし住宅会社が倒産していては探すことも出来ません。
なので、建築請負契約を交わす前に、「設備図の引渡し」と「設備図への配線・配管経路の記載」をお願いしておきましょう。
※工事が終わってからでは正確に書けない図面なので、先に伝えておくことが大切です。
建築請負契約の失敗はマイホーム完成後にも関わるーまとめ
建築請負契約のことを、「建物の工事に関わることだけの契約」と思い込んでいませんでしたか?
しかし、建物工事中の「仮住まいなどでの生活」や「引越し迄の住居の契約」などにも影響しますし、
マイホームで暮し始めてからの、「アフターサービス」や「保証」「補修」「リフォーム」などへの影響も大きいんです。
法律の上、契約書に記されている事柄には非常に大きな力があります。
ですが、それを理解しているにもかかわらず、意外にも簡単に契約書へサインをしてしまう人が後を絶ちません。
そして、結果的に「後悔」「失敗」をしてしまう人も後を絶たないんです。
もちろん、後で不利な条件に気付いても、建築請負契約を交わしてしまえば手遅れ。
契約解除の際は、契約書の印紙代だけでなく、違約金の支払いを求められるのが通例です。
※違約金の相場は、手付金(申込金)であったり、それまでの実費であったり、住宅会社によってさまざま
くれぐれも、条件が曖昧なままの建築請負契約書にサインをしないよう、肝に銘じてくださいね。
初めての家づくりだからといって、誰も特別に見てくれませんし、やり直すこともできません。
住宅会社と契約を交わす際は、「納得できるまでサインしない!」よう心掛けてくださいね。
■ 建築請負契約の「前」と「後」では住宅会社の対応が変わるかもしれない
■ 建物の工事だけでなく、「工事中の生活」や「完成後の暮らし」にも備えておく
■ 建築請負契約書の効力は絶大、納得できるまでサインはしない
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