■ 2階リビングのメリットやデメリットを知りたい人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
ブログの読者さんから、現在計画中のマイホームのリビングに関するご質問をいただきました。
いつも楽しく拝見させてもらっています。
今、注文住宅を建てようと思っており、ブログを見て日々勉強中です。
私が建てようとしている土地は、親から譲り受ける土地です。西側には母屋があり、日当たりに不安があるため、2階リビングにする予定です。
もし良かったら2階リビングや広いバルコニーについての記事を書いて頂けたらとても嬉しいです。
「狭小地」や「隣家が近い敷地」といった建築状況では、満足できる「採光」や「風通し」を得ることが困難な場合も多いため、開放感を求めて2階(上階)にリビングを計画する方が増加しています。
確かに、「敷地の状況」や「間取り」によっては、リビングを2階に計画した方が得られるメリットも多いのですが、デメリットがないわけではありません。
今回は、2階にリビングを計画する「メリット」や「デメリット」だけでなく、デメリットの解消方法についてもご紹介したいと思います。
2階にリビングを設けるメリットとは
「日当たり」や「風通し」に期待できる
敷地が狭かったり、隣家との距離が近いことの多い住宅密集地では、どうしても「日当たり」や「風通し」に不満を感じてしまいやすいのは否めません。
しかし、2階であれば「陽の光」や「風の通り道」を遮るものが減少するので、比較的簡単に「日当たり」や「風通し」に有利な部屋を計画することができます。
大きな空間を設けやすい
天井の高い部屋は解放感があり、実際の広さよりも広く感じやすいため、マイホームに取り入れたい条件の一つなのですが、
1階では規格寸法以に天井を高くすることは困難ですし、仮に実現可能だとしても、かなりコスト高になってしまいます。
吹き抜けを設けるなど、他にも方法はありますが、それでは2階スペースの減少は免れませんし、構造的に弱くなってしまうので、それに対する配慮も必要です。
ですが、2階であれば屋根断熱を取り入れ、屋根面に天井を設けることができるので、小屋裏部分のスペースを有効活用することができます。
更に、2階は1階に比べて「柱」や「耐力壁」の数を減らせるので、建物の構造強度を落とすことなく開放的で広い空間を設けやすいといった利点があります。
外部からの視線が気になりにくい
2階であれば、建物前面の道路を通行する「自動車」や「通行人」からの視線にさらされることが少ないので、外部からの視線を気にして窓をすりガラスにしたり、カーテンを閉める必要がほとんどありません。
しかし、隣家などの同じ高さの建物からの視線は遮れないので、マイホームの間取りを計画する際に、「他の建物の窓の位置」や「外部からの視線」に配慮しておきましょう。
建物の強度を保ちやすい
多層階の建物では下階ほど高い構造強度を求められるため、3階よりも2階、2階よりも1階の方が「柱」や「耐力壁」の数を増やし、梁のせい(高さ)を大きくする必要があります。
なので、下階に開放的な広いスペースを設けようとすると、邪魔な「柱」や「壁」「梁」が必要になることも少なくありません。
しかし、上階であれば構造強度を高めるために必要な「柱」や「耐力壁」の総数が減るので、邪魔な「柱」や「壁」「梁」を設置する必要がなくなる可能性が大幅にUPします。
更に、2階にリビングを設けるということは、1階に「寝室」や「子ども部屋」などの面積が小さい部屋を配置することになるため、
必然的に「柱」や「耐力壁を設けられる壁」が増加することになり、高い構造強度効率的に得る切っ掛けになります。
視線が広がると開放感が得られやすい
人の感覚とは不思議なもので、視線を遮るものがないと実際の広さよりも広く感じやすく、より開放感を得ることができます。
例えば、地盤面から上がれば上がるほど、視線を遮るものが減少するので、1階に比べて2階にリビングを計画した方が大きな開放感を得られることが多く、
広いバルコニーを隣接させたり、大きく開放できる建具を用いた和室(部屋)を隣接させることで、より効果的にリビングの開放感を演出することが可能です。
2階にリビングを設けるデメリットとは
階段の上り下りが面倒
マイホームに2階リビングを計画する際、最も懸念される問題が、頻繁な階段の上り下りを強いられることではないでしょうか。
リビングに合わせてキッチンも2階にあると、買ってきた食材などをその都度2階に持って上がらなければなりませんし、リビングを活用すればするほど、荷物の上げ下ろしも頻繁になります。
それに、将来の加齢による「体力の低下」や「足腰の弱り」に対しての不安にも配慮しておかなければなりません。
家族の出入りが把握しにくい
2階にリビングを設けると、どうしても「寝室」や「子ども部屋」といった個室を1階に配置することになるので、家族の行動が見えにくくなり、マイホームへの出入りが把握しにくくなってしまいます。
リビングで家族団らんを楽しむ習慣があれば、それほど問題ないかもしれませんが、家族間でのコミュニケーションを設ける機会の工夫が必要となるかもしれません。
更に、家族の出入りが把握しにくいということは、空き巣などの侵入者へのアンテナも手薄になるので、防犯に対する配慮も必要になります。
音に関する不満に繋がりやすい
一戸建てでは上階の音が下階に伝わりやすいため、「音」や「振動」が発生しやすい部屋を上階に配置してしまうと、住み始めてから後悔してしまうかもしれません。
特に2階リビングでは、リビングの下階が「寝室」や「子ども部屋」になってしまうことが多いので、マイホームの間取り計画の際に配慮を忘れないで下さい。
更に、洗濯機などの振動音が気になりやすい設備機器の設置場所にも留意し、食洗器などの深夜使用を避けるようにすることも大切です。
2階は室温が上昇しやすい
温かい空気は軽いため、上階で滞留しやすく、室温が上昇する傾向にあります。
開放的で広い空間は、特に冷房効率が悪いので、快適に夏場を過すためにはエアコンが欠かせず、光熱費が大幅にUPしてしまいうことも少なくありません。
もちろん断熱性能を向上させることで、ある程度の対処はできるのですが、気密性が低いと、せっかく冷やした空気を外部に逃がすことになるため、
マイホームの「仕様」や「性能」を決める際は、気密性にも注意しておくことを忘れないで下さい。
庭の使用頻度が下がりやすい
2階にリビングを採用すると、どうしても1階に下りるのがおっくうになってしまい、「外出」や「庭の使用頻度」が下がってしまうようです。
なので、「マイホームへの出入りが頻繁な方」や「庭でガーデニングを楽しみたい」という方は、1階の間取り計画にも力を入れ、利便性を上げるために必要な「部屋」や「設備」の配置にも気を配っておきましょう。
それにキッチンが2階では、庭でバーベキューをする際などに、食材などを持って下りたり、「準備」や「後片付け」に余分な手間がかかるので、
「新築当初は庭でバーベキューをしていたけど、数回しただけでヤメてしまった。」といった声をよく聞きます。
そんなことを防ぐためには、1階にミニキッチンを設置するといった工夫をすれば、庭を有効活用するのに役立つかもしれませんね。
2階リビングのデメリットを解消するにはーまとめ
以上のように、2階にリビングを計画することで、様々なメリットが得られる反面、全くデメリットがないわけでもありません。
特に一般の戸建住宅に比べ、2階リビングは階段の使用頻度が増えるので、「加齢による体力の低下」や「荷物の上げ下ろしの不便さ」などに対しての「心配」や「懸念」の声が後を絶たないようです。
確かに、一般的な日本の戸建住宅に採用されている910モジュール(壁の芯々が910㎜)では、「階段」や「廊下」の幅(有効寸法)が780㎜程度になってしまうため、荷物を持った状態での移動には少し狭く、使い勝手に問題が生じる場面が増えてしまいます。
その上、階段には手摺りが欠かせないため、更に100㎜程度狭くなってしまうので、より「不便さ」や「圧迫感」を感じる方が多いようです。
そんな不満を解消するためには、間取りを計画する際は、「階段」や「廊下」の幅に余裕を持たせることが効果的です。
例えば、910モジュールにこだわらずに階段の幅を広げると、「不便さ」や「圧迫感」の解消に繋がりますし、
もし、「加齢」や「不慮の事故」で足腰が不自由になっても、階段に昇降機(上の写真)を取付けることができます。
一般的な昇降機の取付けには、およそ400㎜程度のスペースが必要になるのですが、階段の有効寸法を1200㎜程度設けておけば、取り付け後も約800㎜の階段幅を確保できるので、一緒に暮らしている家族の使い勝手が悪くなることもありません。
更に、階段の段差を小さくし、踏み板の幅を広くしておけば、足腰が弱ってしまったとしても安心です。
ただし、建築業界では一般的な規格寸法を超えてしまうと、大幅にコスト高になってしまうので、注意して下さい。
階段の場合は、有効幅1200㎜・踏板幅270㎜程度であれば、一般的な建材メーカーから手に入るので、それほどコストアップしないハズです。
他にもホームエレベーターを設置するという方法もありますが、約200~300万円の追加費用が発生してしまいますし、月々の維持費も必要になってしまいます。
これでは資金計画としても現実的ではありませんし、そんな余裕があるのなら、他の追加オプションを取り入れたいという方が多いのではないでしょうか。
ならば、将来的にホームエレベーターを取付けられるスペースを事前に確保しておくという対処法を取り入れてはいかがでしょうか。
と言うのも、後付けでホームエレベーター工事をする場合は、「建物の構造」や「間取り」などの条件によって多額の費用が必要となりますし、建物の強度によっては設置できないこともあります。
なので、事前に「設置スペース」と「専用電源」を設けておけば、将来的にホームエレベーターを設置する工事の「規模」や「費用」をかなり抑えることができるんです。
現在では、1608サイズ(壁芯:間口910㎜奥行1820㎜)で設置可能なホームエレベーターも開発されているので、狭いスペースでもエレベーターを設置できるようになりました。
ホームエレベーターを取付ける場合は、上下階に繋がる吹き抜けが必要になるので、玄関に910×1820程度の「収納」や「シューズクローク」を配置して、その天井が吹き抜けになるように細工しておけば、
将来的にホームエレベーターを設置してもしなくても、マイホームのスペースを有効に活用できるため、満足度を下げることなく将来に備えることができます。
更に、2階のエレベーターの出入口の間取りにも気を配っておくと、将来的な使い勝手も安心です。
もちろん、将来的にホームエレベーターを取り入れる準備をしておくなら、間取りを計画する際に、住宅会社の担当者に伝えておきましょう。
この他にも、2階リビングのデメリットを解消する方法はたくさんあるので、またの機会にご紹介したいと思います。
最後に、何に「メリット」を感じ、何に「デメリット」を感じるかは、「価値観」や「過去の経験」が大きく左右するので、人によって様々です。
図面を見ていても「メリット」や「デメリット」に気付かないことが多いので、そんな時は知人や専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
往々にして、経験者の体験は特に的を得ていることが多く、これから家づくりをする方の参考になるアイデアの宝庫と言っても過言ではありません。
今回の場合なら、既に2階リビングで生活した経験のある方に「質問」や「相談」をすることで、意外な「メリット」や「デメリット」に気付かされるかもしれませんよ。
ご相談のメールありがとうございました。
「西側に母屋が建っているので日当たりに不安がある」とのことですが、これから家づくりを計画するなら、将来的に母屋をどうするかにも気を配っておくと、よりマイホームの満足度がUPすると思います。
と言うのも、普通は近隣の建物の将来の姿を予測できませんが、母屋なら「建て替え」や「リフォーム」の時期などの将来的な計画が把握しやすく、ある程度融通が利くかもしれません。
「マイホームの間取り」や「現在の近隣状況」だけでなく、「将来的なライフスタイル」や「未来の近隣状況」の変化に前もって対処できるのは、注文住宅だからこそ得られるメリットと言えるので、活用しない手はありませんよ。
■ 2階リビング特有のデメリットもあるので、事前の理解と対処を忘れない
■ 2階にリビングを計画するなら、将来的な使い勝手にも気を配っておくことが大切
■ 注文住宅だからこそ得られるメリットを活用しない手はない