■ 基礎工事で注意したいチェックポイントを知りたい人
■ 家づくりで失敗や後悔をしたくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
いよいよ基礎工事の着工です。
初めての家づくりでは、知らないことがたくさんあると思います。
ですが、工事のことを知らないままでは、現場に足を運んでも面白くありませんし、何を見たらよいのかも分かりません。
今回は、戸建住宅で一番多いベタ基礎での、「工程」や「手順」「チェックポイント」について解説します。
ベタ基礎での工程や手順と注意したいチェックポイント
①地縄張り・やり方
建物の配置が分かるように、基礎の外周に縄やロープなどを使って印を付ける工程です。
以前は、やり方と呼ばれる、建物の周りに木杭や木の板をつかって基礎の天端高さを示す工程も行っていましたが、
近年は、レーザーレベルと呼ばれる、高さや水平を測る機械の発達により、やり方を行わない現場も増えてきました。
建物の配置については、地鎮祭が終わった後に住宅会社の担当者と確認することが一般的です。
家づくりがここまで進むと、「家を建てる実感が湧いて感慨深い」とおっしゃるお施主さんがたくさんいらっしゃいます。
②根切り
建物基礎の底面の高さまで、パワーショベルなどの重機を使って土を掘り出す工程です。
作業は1~2日程度で完了します。
この際に搬出される土は、処分を行わないといけないので外部に運び出すのですが、
「GL(建物の高さレベル)の調整」や「敷地内での場内処分」などにより、搬出量を減らす工夫をすれば、コストダウンにも繋がるので検討してみて下さい。
③砕石敷き
地耐力を確保するために、砕石(細かく砕いた石)を全体に敷き、ランマ―と呼ばれる、地面を転圧する機械を使って地盤を締め固める工程です。
この作業は、早ければ半日程度で完了します。
地鎮祭で神主さんから戴いた鎮め物は、この工程の際に建物の中心付近に埋めます。
この工程がしっかりできていないと、地盤に建物の重量による負荷がかかった際に部分的に基礎が沈下することがあるのですが、
よっぽど酷い施工業者でない限り、それほど心配する必要はありません。
④防湿シート敷き・捨てコンクリート
砕石の上に防湿シート(地面から床下への湿気の流入を防止する効果があるビニールシート)を敷き詰めた後に、基礎の外周部などにコンクリートを流し平らに均す工程です。
この作業も、半日程度で完了します。
捨てコンは基礎の「スミ出し(印を付ける)」や「正確な距離を測る」ために行う作業で、基礎の強度を補うものではありません。
「コンクリートに大きなヒビが入っている!」と心配するお施主さんもいらっしゃいますが、
捨てコンは基礎の強度に関係しないので、どんなに大きなヒビが入っていても問題ありません。
⑤配筋(鉄筋組み)
鉄筋コンクリートの引張強度を担う、鉄筋を組む工程です。
通常は、一本一本の鉄筋を手作業で結束線(細い針金)を用いて組み立てるのですが、
最近は、ユニット鉄筋と呼ばれる、事前に工場で鉄筋を組み上げたパーツを使うことも増えてきました。
基礎の規模にもよりますが、一般的なベタ基礎では2~3日で完了する工程です。
配筋でのチェックポイントは、継ぎ手長さや補強筋の確認などがあるのですが、かなり複雑で判断が難しい部分ですし、
瑕疵保険の検査で第三者の検査員が図面と照合してくれる場合は、それほど心配はありません。
⑥基礎外周の型枠組み
基礎外周の立ち上がり部分に、外部にコンクリートが漏れ出さないように、型枠を組んでいく工程です。
基礎の規模にもよりますが、ほとんどは1日程度で完了します。
上記の写真では、鋼製の型枠を使っていますが、木製の型枠を用いることもあります。
基礎に使用する型枠は、鋼製でも、木製でも完成する基礎の出来上がりに大きく影響しません。
⑦床ベースの生コン打設
基礎のベース(床)部分にコンクリートを打設する工程です。
多くの場合は、基礎外周の型枠組みと同日に行います。
コンクリート打設後、職人さんがコンクリートを平らに均していくのですが、
いつ見ても、見事な手さばきに感心してしまいます。
⑧基礎内部の立ち上がり型枠組み
ベースコンクリートがある程度乾いたら、基礎内部の立ち上がり部分の型枠を組む工程に進みます。
職人さんの人数にもよりますが、2~3日で完了する作業です。
上の写真は、木製の型枠を用いたものです。
複雑な基礎の場合は、木製の型枠の方が作業しやすいと言う職人さんが多いですね。
⑨アンカーボルトの設置
基礎と建物の土台を繋ぐアンカーボルトを設置する工程です。
基礎立ち上がりの型枠組に合わせて作業するのが一般的です。
基礎の施工精度で問題になるのが、かぶり厚と呼ばれる、鉄筋の外側とコンクリートの外部面の距離なのですが、
基礎立ち上がりのかぶり厚は4㎝以上必要なのですが、型枠の真ん中に鉄筋が通りよく入っていれば、かぶり厚は十分とれているので問題ありません。
⑩基礎立ち上がりの生コン打設
基礎の立ち上がり部分にコンクリートを打設する工程です。
基礎立ち上がりの型枠組みの最終日に行うことが多い作業です。
コンクリート打設後は、バイブレーターと呼ばれる振動機を用いてコンクリートを隙間なく行き渡らせなければいけません。
その後、レベラーと呼ばれる流動度の高いコンクリートを用いて、基礎立ち上がり天端の水平を出します。
ずいぶん昔は、コンクリート打設後にアンカーボルトを基礎に差し込む「田植え」と呼ばれる方法を行う業者もいましたが、
「田植え」は施工精度も悪く、アンカーボルトとコンクリートの付着強度が保てないことも多いので、今はほとんど行われていません。
⑪養生
基礎立ち上がりのコンクリート打設が終わったら、コンクリートの強度が出るまで養生と呼ばれる、破損防止の工程に進みます。
コンクリートの強度発生までの期間は温度に大きく影響されるので、夏季は3日以上、冬季は5日以上の養生が必要です。
写真では、雨水などが入らないようにブルーシートを被せていますが、
コンクリートの表面が固まってしまえば、水の影響は受けないので無くても問題ありません。
⑫型枠ばらし
基礎立ち上がりのコンクリートの強度が出たら、いよいよ型枠ばらしの工程です。
この作業は半日程で完了し、後は仕上げを残すだけとなります。
基礎立ち上がりの位置は建物の重量を支えるために柱や壁に合わせているので、型枠を外すと間取りがはっきり分かるようになります。
基礎立ち上がりのコンクリートの打設が悪いと、型枠を外したあとにジャンカ(コンクリートの充填不足)が発生してしまいます。
基礎の仕上げをするとジャンカは隠れてしまうので、確認のためにも現場を訪れることをおススメします。
⑬雑コン・仕上げ
基礎工事の最終工程として、雑コンと呼ばれる勝手口の土間や給湯器置場の打設や基礎のバリ取り(継目の不要部分の除去)などの仕上げを行います。
この作業は1~2日程度で完了します。
これで基礎工事の完成となり、次の木工事の工程へ進みます。
以前は、基礎の換気のために基礎外周に換気口があったのですが、
近年は、基礎の天端の上に置く、基礎パッキンと呼ばれる約2㎝の建材で換気を行うようになりました。
戸建住宅には布基礎とベタ基礎がありますが・・ーまとめ
以前は、木造住宅でも布基礎(建物1階の壁の下に配置する独立した基礎)を採用していましたが、ベタ基礎に比べて工事期間が長いので、コストも高額というデメリットがありました。
更に、2000年の建築基準法の改正により耐震基準が強化されたために、布基礎は堅硬な地盤でなければ採用できなくなってしまいました。
この様な経緯もあり、近年の木造住宅ではベタ基礎を採用している住宅会社がほとんどです。
ですが、布基礎の強度がベタ基礎に劣っている訳ではないので、一概にベタ基礎が良いという訳ではありません。
しかも、「鉄筋の太さ」や「基礎の立ち上がりの長さ」によっては、布基礎の方が優れていることもあるので、
ベタ基礎を採用しているから良い住宅会社という訳でもありません。
最後に、
「素人が現場を見てもしょうがないから・・」といって現場に顔を出さないお施主さんもいらっしゃいますが、
個人的な意見ですが、勿体ないと思います。
分からないことは、現場監督や現場の職人さん達に教えてもらえますし、話しているだけでも楽しいものです。
それに、しっかりとした住宅会社を選んでいれば工事に問題はないハズですが、お施主さんが現場に来ると良い意味での緊張感が生まれるというメリットもあります。
せっかくですから、現場に足を運んでみませんか。
■ 捨てコンは基礎の強度に無関係なので、ヒビがあっても問題ない
■ 鉄筋の検査は、瑕疵保険の検査員に任せてもそれほど心配はない
■ 布基礎がベタ基礎に比べて劣っている訳ではない
■ せっかくだから、建築現場に足を運ぼう