■ 住宅会社の契約内容に納得できず困っている人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
ブログの読者さんから「相見積もり中の契約」に関するご質問を頂きました。
ご相談者の方には直接メールで返答させていただきましたが、同じ悩みで困っている方のためにも、ブログで紹介させていただきたいと思います。
築60年の古い家を、耐震補強、リフォームしようとしております。
まだ相見積もりの段階なのですが、相談した設計士さんから、設計監理委託契約書を書くように言われました。
くどいようですが、まだその設計士さんに決めたわけではありません。しかし、ここから先は、この設計監理委託契約書がないと進まないと、説明を受けました。
普通、こういった書類は、相見積もりの時点で書くべきではないように思うのですがいかがでしょう?
リフォーム工事にかかわらず、住宅会社の営業マンは契約を急ぐ傾向にありますよね。
たしかに、「見積もり」を行うために必要な「調査」や「設計」「提案」には、多大な「労力」や「費用」を要するので、「早く契約して欲しい!」という担当者の気持ちは分からないではありません。
しかし、施主からすれば、数百~数千万円単位のお金が動く建築工事のパートナーを決めるわけですから、「慎重になり過ぎるくらいが丁度イイ!」と思いますし、「納得いくまで情報を収集した上で比較検討を行う」のは当たり前です。
では、相談者のKさんへの回答を紹介した後、相見積もり中に契約を迫られた際の対処法について説明させていただきますね。
ご相談内容(設計監理委託契約について)への返答メール
K様 お問い合わせありがとうございます。
契約書の詳細内容が分からないので、お返事が難しいのですが、
その契約書に「業務の委託」や「金銭の授受」に関することが記載されており、まだ相見積もり中(依頼先を決めかねている)なら、契約書を交わすべきではないでしょう。
契約書の内容によっては、キャンセルなどで多大な被害を受けてしまうことがあるので、細心の注意が必要ですよ。
ですが、この部分が少し気になります。
>ここから先は、この設計監理委託契約書がないと進まないと、説明を受けました。
というのも、「建築設計事務所」や「住宅会社」によっては、簡単な概算見積もりは無料サービスでも、具体的な「設計」や「詳細見積もり」に対しては有料と考える業者も少なくありません。
特に、一から建てる新築工事と違い、「耐震改修」や「リフォーム工事」では現況の状態を知る術が少なく、建築業者にとってもリスクが大きいので、詳細な「設計」や「見積もり」を行うためにはそれなりの調査が必要ですし、スタッフの人件費なども必要なんです。
ここで大切になってくるのが、工事の依頼者であるK様のお気持ちになります。
この設計監理委託契約書を求めてきた業者の「設計」や「見積もり」の内容が気に入らなかったり、契約書自体が不当と感じる内容であれば、断るべきだと思います。
しかし、今回ご相談いただいたのは、この業者に対して「工事を依頼したい気持ちがある」からではないでしょうか?
もしそうなら、設計監理委託契約書の内容について、業者としっかり話し合うことをおススメします。
例えば、
・詳細見積もりの作成に必要な実費を支払い、設計監理委託契約を先延ばしにする
・設計監理委託契約解除の条件をお互い納得できるものにする 等
もしくは、一旦この業者との話し合いはストップしておいて、他の業者をあたってみるのも一つの方法です。
余談ではありますが、「設計」や「見積もり」などのサービスが良い業者に限って技術が低かったり、金額が高かったりすることは珍しくありません。
なぜかというと、そういった業者が無料で行っている「設計」や「見積もり」に必要な経費は、実際に工事を契約したお客さんが支払っていたり、工事で使う「材料」や「職人」の費用を削ることで賄っていることがあるんです。
逆に、一定以上の「設計」や「見積もり」の費用を有料化している業者の方が、適正な費用で工事を請け負う努力をしていたりするので、優良な住宅会社である傾向が高かったりします。
少し迷わせてしまうようなことを言ったかもしれませんが、このようなことも踏まえた上で、住宅会社との契約を考えてみてはいかがでしょうか。
ご返答内容がズレていたり、他にも質問などございましたら、再度お問い合わせくださいね。
工事請負契約書と設計監理委託契約書の違いは何?
一口に「契約書」と言っても、記載されている内容によって、法的な拘束力が大きく異なります。
まずは建築業界でよく使われている、「工事請負契約書」と「設計監理委託契約書」の違いについて説明しますね。
工事請負契約書とは
「建築工事を依頼する発注者(建築主)」と「実際に工事を施工する請負者(建築業者等)」との間で交わす、工事に関する様々な条件などの取り決めを記載した契約書のことを「工事請負契約書」と呼んでいます。
※契約の段階で対象物が存在しておらず、対象物を完成させるための行為に対して行う契約形態のこと
契約書の内容には、工事の詳細が分かる「設計図書」を添付し、それを基に「工事名称」や「工事場所」「工事期間」「請負代金」などが具体的に記載されていることが一般的です。
しかし、「書式」や「形式」などの規定があるわけではなく、あくまでも「発注者」と「請負者」の合意によって成り立っているので、契約書に記載される内容が決まっているわけではありません。
近年では、「工事請負契約書に記載しきれない細かな事柄」や「契約に関するトラブルの解決方法」などが記載された、建築工事請負契約約款を添付するのが一般的です。
「建築工事請負契約約款」についての詳細へは、下記のリンクから移動できます。
設計監理委託契約書とは
実際の建築工事に関してではなく、「工事で採用する設計図書の作成」や「工事中の現場監理(図面通りに施工されているかのチェック)」についての様々な「条件」や「取り決め」などを記載し、契約を交わすために使われる契約書を「設計監理委託契約書」と呼んでいます。
主に建物の「設計」や「監理」を生業としている、建築設計事務所との間で交わすことが多かった契約書なのですが、
「設計」や「調査」「提案」「見積もり」などに多大な「労力」や「費用」を伴う、「新築工事」や「大規模なリフォーム工事」でも採用されることが増えてきました。
一般的に「作成する設計図書(図面)の内容や種類」や「現場監理の方法や頻度」などについて記載されていますが、「設計監理委託契約書」にも決まった「書式」や「形式」などの規定がありません。
なので、建築工事の「発注者」と「請負者」双方の話し合いにより、契約内容を決めることも可能です。
「設計監理委託契約書」についての詳細へは、下記のリンクから移動できます。
契約書と言われたら、堅苦しくて難しいイメージがあるかもしれませんが、最も大切なのは中に書かれている内容です。
それに、契約は「発注者」と「請負者」双方の合意によって交わすものなので、内容が気に入らなければ変更を願い出ることも可能なんですよ。
契約内容が気に入らなければ変更の話し合いを!ーまとめ
まず、絶対してはいけないのは、「契約書の内容に納得していないのに契約を交わしてしまう」ことです。
いくら住宅会社の担当者が「後でいくらでも変更できますよ」とか「形式上の仮契約だけでもお願いします」などと説明してきても、関係ありません。
あなたがサインした契約書に、「契約解除の場合は手付金は返還しません」や「キャンセル料として〇〇円必要です」などと記載されていれば、それを拒むことは非常に困難です。
住宅会社と契約を交わした後になってから、「自分に不利な内容が記載されている」ことに気が付き、泣く泣く契約書に従ったあげく、「家づくりに大失敗してしまった・・」という人は決して珍しくありません。
では、肝心の「相見積もり中に契約を迫られた際の対処法」をご紹介します。
ご相談者さんへの返答メールにも記載いたしましたが、
まだ工事を依頼する住宅会社を決めかねているのに、「これ以上の設計や詳細見積もりをする場合は契約が必要です」と住宅営業マンに言われても、
「具体的な契約を交わさずに、設計や見積もりに必要な実費を支払う」などの方法を提案すれば、対応してもらうことができるハズです。
(ハズ・・と言うのは、住宅会社にも仕事を選ぶ権利があるからです。)
もちろん、上記は「契約するまでの踏ん切りは付かないけど、その住宅会社に工事を依頼したい気持ちがある」といった場合に活用するのが有効で、
特に魅力を感じていないのなら、それ以上の「設計」や「見積もり」を一旦止めてもらい、他の住宅会社を探してみるとイイでしょう。
他にも、「その住宅会社に工事を依頼したいけど、契約書の内容や条件が気に入らない」や「契約書の内容が自分にとって不利かどうか判断できない」といった場合もあるかもしれません。
そういった時は、自分の理想としている条件を契約書に記載してもらえるように、思い切ってお願いしてみることをおススメします。
先ほども少し触れましたが、契約書には決められた「書式」や「形式」がありません。
それに、契約は双方の合意によって成り立つものなので、住宅会社の言いなりになる必要は全くありませんし、話し合いで内容を変更することだって可能なんです。
(それに、契約を交わす前の発注者の力は絶大なので、ある程度の無理難題でも受け入れてくれる可能性が高く、自分達家族にとって有利な契約を交わす最後のチャンスと言っても過言ではありません。)
以前にも記事にしましたが、国土交通省のHPでも「契約書」や「契約約款」などについての説明があるので、参考にするのも一つの手ですよ。
国土交通省のHPの民間建設工事標準請負契約約款(乙)
余談ですが、「今契約してくれたら〇〇円値引きします」などの甘い言葉で契約を誘う住宅営業マンもいますが、
その多くは「契約を決断させるため」や「自社に有利な契約を行うため」の手段であり、元々提示している見積もり金額に値引きの余力を残しておく、契約を取るためのテクニックに過ぎないことがほとんどなんです。
なので、その際に契約を交わさず、数ヶ月後に同じ契約を持ちかけても、よく似た金額で契約することは難しくないでしょう。
(中には、「会社の決算期」や「本当の期間限定キャンペーン」などの場合もありますが、それを見分けることは非常に困難です。
私の経験上ですが、契約を決断させる際の値引きの8~9割ほどは、「いつでも値引き可能な金額」のように感じます。)
少し話がズレてしまいましたが、
住宅会社との契約は、「これからの家づくりの成否を分ける重要な山場」と断言できます。
後で「失敗」や「後悔」を感じないためにも、しっかりと情報収集を行い、「納得できない契約は交わさない」という心構えを絶対的な条件として、家づくりを楽しんでくださいね。
明日、契約書を受取り方々、もう一度30分ほど調査したいと、その設計士さんから連絡があり、大変困っておりました。
「金銭の授受」、しっかり歌ってありました。
取り敢えずは、有料で調査だけやっていただき、まだ相見積もりの最中なのだと、きちんと伝えようと考えております。
これだけの短い時間で、こんなにもしっかりしたお返事いただけるとは、夢思っておりませんでした。
本当にありがとうございました。今後とも、よろしくご指導くださいませ。
ご丁寧にお返事までいただき、ありがとうございました。
住宅会社との契約では、「どんなことが書かれているのか」内容の確認が必須なんです。
もし内容が理解できなかったり、判断に迷うようなことがあったら、納得できるまで「情報収集」と「話し合い」を心掛けましょう。
その他、家づくりに関する「質問」や「相談」があれば、お気軽にお問い合わせくださいね。
■ 住宅営業マンが何と言っても、契約書に記載されている内容の確認は必須
■ 契約は双方の合意により成り立つので、契約内容に納得できなければ変更の願い出が可能
■ トラブルに巻き込まれないためにも、「慎重になり過ぎるくらいが丁度イイ!」