■ 物件の資産価値や売却時の容易性にこだわる人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
突然ですが、「嫌悪施設」と聞いて、どんな環境を想像しますか?
「墓地」や「ゴミ処理場」「工場」・・と、様々な施設が思い当たるのではありませんか。
しかし、ご家族の方が嫌悪感を抱く施設も同じでしょうか?
人の価値観は多種多様で、育ってきた環境も異なります。
ご自分が嫌悪感を抱くからといって、ご家族の方が同じ感情を抱くとは限りませんし、その逆もしかりです。
それに、自分では嫌悪施設と感じていなくても、実は土地売買では嫌悪施設の類として扱われていたり、その土地に住み始めてからこそ見えてきた意外なポイントに嫌悪感を抱いてしまうことも珍しくありません。
今回は、マイホームでの住み心地だけでなく、土地の価格にも影響しやすい「嫌悪施設」についてまとめてみました。
土地売買における嫌悪施設とは?
家づくりの書籍を読んでいると、「土地購入時は嫌悪施設に注意!」なんて書かれていることがありますけど、
どんなものが嫌悪施設の対象になるか決まっているんですか?
不動産業界では、その存在が近隣の人達から嫌われやすいものを「嫌悪施設」と呼んでいます。
しかし、どんな施設が対象になるかは、個々の判断や価値観、時代背景などによって変わることが多いため、具体的な定義はありません。
ただ、一般的に嫌悪施設と扱われている施設があるのも事実です。
では、最初に土地売買で嫌悪施設となり得る条件から見てみましょう。
嫌悪施設となり得る条件
- 騒音を発生させる
- 振動を発生させる
- 悪臭を発生させる
- 大気汚染を発生させる
- 危険を感じさせる
- スティグマ(心理的嫌悪)を感じさせる
- 面倒事に巻き込まれやすい
こんなにたくさんの「嫌悪施設となり得る条件」があるんだ・・
想像しやすい条件もありますが、中には気が付きにくかったり、人によっては平気、なんて項目もありますよね。
そう、感じ方は人それぞれなので、すぐに気が付けるとは限りませんし、一見すると気が付きやすそうな騒音や悪臭といった条件でも、個々によって許容範囲が異なるので、普通の人には気にならない程度でも敏感な人にとっては・・という場合も多々あります。
では、一般的に嫌悪感を抱きやすい施設の具体例を見てみましょう。
一般的な嫌悪施設
◆騒音や振動の発生が懸念される施設
- 交通量の多い幹線道路
- 高速道路
- 大型車両の出入りが頻繁な施設
- 鉄道線路
- 飛行場
◆悪臭や煙の発生が懸念される施設
- 工場
- 火葬場
- 下水処理施設
- ドブ
- 廃棄物処理場
- 養豚・養鶏場
◆危険を感じさせやすい施設
- 危険物貯蔵施設
- 原子力発電所
- ガスタンク
- ガソリンスタンド
- 高圧電線塔
- 暴力団事務所
- 軍事基地
◆心理的な嫌悪を感じさせやすい施設
- 墓地
- 葬儀場
- 電波塔
- 刑務所
- 宗教施設
- 風俗店やラブホテル
- パチンコ店や競輪・競馬場
たしかに、できたら近くに住むのは避けたい施設が多いなぁ~
でも、こういった一般的に挙げられる嫌悪施設については、不動産会社におしえてもらえるんですよね?
土地を案内してもらう際なんかに・・
ええ、誰もが嫌がるような分かりやすいケースであれば、親切に教えてくれることもありますが・・
こればっかりはケースバイケースと言わざるをえませんね。
土地売買時の重要事項説明での注意点は?
なぜケースバイケースなのかというと、嫌悪施設の告知義務については宅建業法でも具体的に定められておらず、不動産業者に任されていることの方が多いんです。
なので、「必ず不動産会社からの説明がある」と思い込まないように注意してください。
エッ!そうだったんですか・・
でも、さすがに土地の売買契約時には説明してくれるんですよね・・?
そうですね、最近では土地売買後のトラブルを防ぐために、知り得る範囲の嫌悪施設の情報を教えてくれる不動産会社も増えているようです。
しかし、契約時の重要事項説明にも嫌悪施設の告知義務についての具体的な定めはないので、不動産会社の説明が全てとは限りません。
それに、嫌悪施設の存在自体がネガティブ要因なので、「土地の購入を迷っているお客さんにわざわざ知らせることはない」と考える不動産会社がいても不思議じゃないですよね。
たしかに、不動産会社も商売ですもんね・・
でも、近隣に嫌悪施設がある土地なら、その地域の相場よりも安く購入できることが多いんですよね?
もちろん、嫌悪施設の存在は土地価格に影響を及ぼすマイナス要因になり得ますし、多くの人が嫌悪感を抱く施設が周囲にある土地は相場より安価で購入できる傾向があります。
なので、その施設の存在が気にならない人にとっては、お買い得と言えるかもしれませんね。
ですが、将来的に売却を考えている場合は、高値がつきにくいだけでなく、買い手がつくまでに相応の時間が必要になる可能性が高いことも忘れないでください。
でも、近隣の相場より安いなら、購入候補にするのもアリかも・・
逆に言えば、「近隣の相場より安価な土地の周りには嫌悪施設があるかもしれない」ってことだから、土地の価格に注意すれば、気が付かない嫌悪施設を見つけるのに役立つかもしれませんよね。
たしかに一理ありますが・・
土地の売主にしたら、「少しでも高く土地を買って欲しい!」というのが本音なので、「嫌悪施設が周囲にある土地は相場より安い」という思い込みは禁物です。
それに、どんな施設に嫌悪感を抱くかは人それぞれなので、住み始めてから後悔しないように注意しましょう。
嫌悪施設は人それぞれ!自分の目で確かめよう!ーまとめ
それでは家作くん、どんな嫌悪施設がマイホームの近くにあったら嫌ですか?
急にどんな嫌悪施設が、って聞かれても・・
すぐに思い付くのは、「深夜営業の焼肉店」や「若者がたむろしているコンビニ」なんかですね・・
おっ!随分と具体的ですね。
もしかして体験談ですか?
そうなんです。独身の頃に住んでいたマンションの下が焼肉屋とコンビニで・・
「臭い」や「煙」「騒がしさ」なんかで、いつも困ってたんですよ。
ですが、焼肉屋さんやコンビニを嫌悪施設と感じない人も多いと思いませんか?
このように、何に嫌悪感を抱くかは、その人の価値観や経験などによるところが大きいんです。
では最後に、人によっては嫌悪施設となり得る具体例を挙げてみましょう。
嫌悪施設となり得るもの
- 桜などの植栽
- コンビニや飲食店
- 新聞配達所
- 消防署
- 大使館
- 児童施設や学校
- 老人ホームや障碍者施設
- 公園やイベント会場
エッ!桜の木が嫌悪施設になることもあるんですか!?
僕なんて毎年花見に行きますし、マイホームの窓から満開の桜が見えるなんて羨ましいけど・・
満開の桜は美しいのですが、「花が散った後の掃除は大変で、毛虫などが発生しやすく、意外と手間がかかる・・」と、近くに住むのを敬遠する人もいるんです。
他にも、「小学校が近くにあるのを気に入って土地を購入したところ、子ども達の声が騒がしくて住み難かった」「マイホームの横がゴミ置き場になっていることに住み始めてから気が付いた」なんて体験談もあります。
たしかに、経験して初めて気が付くことってありますよね・・
土地を見学した際に目を向けられるとイイんですけど・・なかなか全てというわけには・・
とは言っても、人任せで何とかなるものではありませんので、候補地が絞り込めたら自分の目で確認するように心掛けましょう。
ですが、「桜のように一定の時期だけ」や「将来的な大型ショッピングモールの計画」など、事前に注意していても見落としやすい事柄も少なくありません。
そんな失敗を防ぐには、「近所にお住まいの方に声をかける」「その土地を管轄する市区町村役所で調べる」といった対処法も有効です。
たしかに自分達だけでは限界がありますもんね。
住み始めてから後悔したくないし、候補地の周りに何があるかにも注意するように心掛けておきます。
近くにあると嬉しかったり便利だったりする施設でも、近すぎると困ることもあるので、周辺にどんな施設があるのかを事前にチェックすることは大切です。
それと冒頭で話したように、自分が嫌悪施設と感じなくても、ご家族の方が同じとは限りません。
事前に家族の意見をまとめておけば、候補地の下見の際に見落とす危険性がグッと低くなるので、参考にしてみてくださいね。
■ 嫌悪施設の存在は住み心地だけでなく土地の価格にも影響しやすい
■ 土地契約時の重要事項説明にも嫌悪施設の告知義務についての具体的な定めはない
■ 気付き難い嫌悪施設の発見には近所の方や市町村役場への聞き込みが有効
■ 何に嫌悪感を抱くかは人それぞれなので事前に家族全員の意見をまとめておこう