■ マイホームの給排水設備工事のチェックポイントが気になる人
■ 家づくりで失敗や後悔をしたくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
「マイホームを建てよう!」と思い立ち「情報収集」や「準備」を始めても、建物の「間取り」や「外観」「設備機器」にばかり目が行ってしまうのではないでしょうか。
確かに、夢にまで見たマイホームでの「新しい生活」や「快適な暮らし」を想像すると、新鮮でワクワクするのも分かります。
しかし、目に見える部分ばかりに気を取られていては、新居に住み始めてから、思ってもみなかったことで「失敗」や「後悔」を感じるかもしれません。
今回は、注文住宅で見落としやすい工程の一つでもあり、後で不便を感じても取り返しが困難な、給排水設備(上下水道)工事についてまとめてみました。
給排水設備(上下水道)工事とは?
給排水設備工事とは、「キッチンやトイレ・洗面台などの住宅設備機器(衛生設備)」や「給水管や排水管・排水桝・雨水桝・給湯設備などの給排水設備」の「新規設置」や「交換」を行う工事の総称です。
そして、戸建住宅での給排水設備工事は、大きく分けて「給湯給水(上水)工事」と「雨水・汚水(下水)工事」の2つに分類することができます。
主に水と関係の深い工事なのですが、戸建住宅では「建物の床下・天井・壁内」や「敷地の地中」などに施工されるため、普段は目に付くことがありません。
しかし、後で変更しようと思っても、「壁紙(クロス)の貼り終わった後の内壁・天井の撤去」や「庭の土を重機で掘り起こす」といった大規模な改修工事が必要になることが多いので、「多額のリフォーム費用」や「長期間の工事」による負担を覚悟しなければなりません。
それに、「設備機器の不具合」や「給排水設備のトラブル」に見舞われたとたん、日々の生活に支障が生じる場合も多く、気付くのが遅れると、建物の「構造部材」や「断熱材」などにも大きなダメージを与えることになるので、施工精度が非常に大切な工事の一つでもあります。
給水給湯管(上水道)工事について
「給水管」や「給湯管」と言えば、少し前までホームセンターなどでも売っている塩ビ管(塩化ビニールパイプ)を用いるのが主流だったのですが、
配管の「曲げ部分」や「4mを超える直線部分」には、接続部品を使って塩ビ管を継ぐ方法しかないので、熟練度の高い職人が施工しなければ「漏水(水漏れ)のリスクが非常に高くなる」というデメリットがありました。
ですが、近年の「建築技術の向上」や「建材の開発」により、戸建住宅の宅内配管には「架橋ポリエチレン管を素材としたヘッダー管」を用いた「ヘッダー工法(上部写真)」の採用が増えています。
この「ヘッダー工法」を採用する大きなメリットは、「塩ビを素材とした給水・給湯管」に比べて遥かに耐久性が高く、継手部分に専用のパーツを用いるため、熟練工でなくても施工が簡単で、漏水事故が少ないという点です。
更に、「最新技術を採用するには、高額なコストが必要」という金銭的デメリットがつきものですが、
この「ヘッダー工法」については、資材費こそ少し高額ではあるものの、「施工に熟練技術が必要ない」や「施工時間が短縮できる」といった特徴があり、人件費を抑えることに繋がるため、「塩ビ管による給水・給湯管工事」に比べ、それほど工事価格が高額にならないという恩恵も受けられます。
このような説明を聞くと、マイホームの給水給湯管工事に「ヘッダー工法」を採用すれば、メリットばかり得られるように感じるかもしれません。
しかし、意外かもしれませんが、「施工に熟練技術が必要ない」というのはデメリットに繋がることがあるんです。
熟練度の低い新米職人による「給水・給湯管の継ぎ忘れ」や「接続不良」などの施工ミスが発生したり、「知識不足」や「経験不足」による「隠れた施工不良」が増えているとも言われています。
給水給湯工事のチェックポイント
- 「給水管」や「キッチンなどの設備機器」から漏水(水漏れ)はないか
- 各設備器具(蛇口)から出る「水量」や「温度」に問題はないか
- 露出している(外気に触れる)給水給湯管の保温工事はされているか
- 「給水メーター」や「給水BOX」の「設置箇所」や「設置高さ」は適切か
- 宅外の給水管に規定の埋設深度(地域による)が適用されているか
- 「給水管」や「給湯管」に接続忘れはないか
雨水・汚水排水管(下水道)工事について
戸建住宅の排水管工事には、大きく分けて2つの種類があります。
一つは建物内の「キッチンや浴室などから排出される雑排水」や「トイレから排出されるし尿を含む汚水」を建物外(敷地)に出すための「屋内排水管工事」で、
もう一つは敷地まで出された排水管を下水道処理施設に通じる下水道本管と接続したり、敷地の雨水を処理するための雨水管を設置する「屋外排水管工事」です。
住宅会社によっては、この「屋外排水管工事」や「屋外給水管工事」などの建物外の工事を別途工事として扱うことがあるので、かなり坪単価を安く感じることがあります。
しかし、ローコスト住宅と呼ばれる注文住宅の形態で特に多いのですが、「マイホームで生活を営むための全ての工事を合計したら、思っていたよりも高くついた」なんてことも珍しくないので、注意が必要です。
排水管工事では、利用する衛生設備の種類によって、「排水管内径の最低寸法」や「排水管内径による排水勾配の最低限度」が規定されるなど、排水管設備には厳しい基準があります。
例えば、一般住宅のトイレの場合、屋内排水管は内径75㎜以上の排水管を用いて、1/100(1mの距離で10㎜の高低差)以上の勾配が必要となり、
屋外排水管は内径100㎜以上の排水管を用いて、1/50(1mの距離で20㎜の高低差)以上の勾配で施工しなければなりません。
それに、定められた「衛生設備」や「排水量」による基準を守らない施工では、「排水管が詰まってしまう」や「汚水が逆流してしまう」といった、トラブルの発生確立が大幅にUPしてしまいます。
余談ですが、下水の排除方式には「分流方式」と「合流方式」の2種類があり、住む地域によって排水の処理方法が異なることがあります。
それぞれに「メリット」や「デメリット」があるのですが、下水の排除方式にこだわって住む地域を決める方はほとんどいないので、「自分達家族が住む地域の排水処理方法を知っておく」といった程度の認識で問題ないと思います。
雨水・排水工事のチェックポイント
- 「排水管」や「キッチン」などの設備機器の接続部から漏水はないか
- 各排水管の勾配は適切に施工されているか
- 「汚水桝」や「雨水枡」の設置高さは適切か
- 宅外の排水管に規定の埋設深度(地域による)が適用されているか
- 排水桝に水が溜まっていないか(詰まっていないか)
- 排水時にゴポゴポなどの異音が聞こえないか
- 「排水管」や「排水桝」「雨水桝」に接続忘れはないか
給排水図面が竣工図面に入っているか確認を!ーまとめ
家づくりを経験したことのある方は、ご存知かと思いますが、注文住宅に限らず戸建住宅を購入すると、竣工図面と呼ばれる建物の図面を受け取ることができます。
しかし、一口に竣工図面と言っても、含まれる図面の種類は住宅会社によって様々で、「平面図」や「立面図」「配置図」といった基本的な図面だけの場合や、建物の骨組みなどが記載された「基礎伏図」や「土台伏図」「軸組図」などの構造図が含まれていることもあります。
もちろん、できるだけ多くの種類の図面を受け取っておいた方が、「将来的なリフォーム」や「万が一の不具合発生」「住み始めてからの照明や棚などの追加設置」などに役立つことは言うまでもありません。
ここで忘れて欲しくないのが、今回説明した給排水設備工事の内容が記載された「給排水設備図」や「電機配線図」を竣工図面に含んで欲しいと住宅会社に伝えておくことです。
これらの設備図面がないと、どこに「給水給湯管」や「各種排水管」「電気配線」が設置されているのか確信が持てなくなるので、
「万が一の不具合発生」や「将来的なリフォーム」の際に、剥がす必要のない壁をめくるなど、余計な工事に「費用」や「時間」を浪費することになってしまいます。
住宅会社の中には、「今後のメンテナンスは建物を建てた業者が工事を行うので、心配ありませんよ」などと説明することもあるようですが、
同じ施工業者が工事を担当したとしても、肝心の職人が変わってしまえば意味がありませんし、仮に同じ職人が担当したとしても、施工内容の全てを覚えていることなんてありえません。
それに、将来的に「住宅会社」や「施工業者」が倒産してしまっては、マイホームを建ててもらった職人に工事をお願いすることは現実的に不可能です。
なので、マイホームの資産価値を落とさないためにも、工事で使われた図面は全て竣工図面として受け取れるように、事前に住宅会社の担当者に伝えておきましょう。
まだまだ説明しきれないのですが、給排水設備(上下水道)工事一つとっても、様々な「決まり事」や「注意点」「特徴」「チェックポイント」などがあります。
もちろん、家づくりに関係する全てのことを知っておく必要はありませんが、「プロに任せておけば大丈夫!」といった甘い認識では、思わぬ落とし穴に足をすくわれてしまうかもしれません。
そんな失敗を回避するためにも、どんなことに注意し、何をチェックしておけばトラブルを回避できるか、それを知っておくことが大切なんです。
これからも、あなたの家づくりに役立つ情報を発信する予定ですが、家づくりに関する知識は多岐にわたりますし、困っている内容は人それぞれのハズです。
「こんなことが知りたい!」や「こんな時はどうしたらイイの?」といった「要望」や「疑問」があれば、遠慮なくお問い合わせくださいね。
できる限り、たくさんの「質問」や「相談」を共有したいと思っています。
■ 給排水設備工事のやり直しには、「多額の費用」と「長期間の工事」が必要
■ 工事中や竣工検査時に、チェックポイントの確認を怠らない
■ 建物引渡し時に受け取る竣工図面には、必ず給排水設備図面を含んでもらう