■ マイホームを建築する土地を探している人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
マイホームを建てる土地を探し始め、少しずつ「土地の相場観」が身に付くと、
「あの土地でこの値段は高い!」「おっ!この土地は掘り出し物かも?」といったように、土地の価格ばかり気にする人がいます。
たしかに、「良い物を少しでも安く!」と思う気持ちも分かりますが、
土地の価格ばかり気にしていると、「こんなデメリットがあるなんて気付かなかった・・」や「建物の建築費用に莫大な追加費用が必要になってしまった・・」なんてことになりかねません。
今回は、このような失敗が後を絶たない、高低差の大きい土地の「注意点」と「チェックポイント」について紹介します。
どのくらいの高低差に注意して土地探しをしたらいいの?
高低差の大きい土地って言われても・・僕のような建築の素人には、「どのくらいの高低差」に注意したらいいのか分かりません。
具体的に何メートル位から気を付けないといけないんですか?
いい質問ですね。
目安としては、「隣地との高低差が2mを超える」と規制にかかることが多いのですが、
もっと厳しい条例を定めている市町村もあるので、念のために確認をおススメします。
それって、どうやって調べたらいいんですか?
「がけ条例」といった名称で定められていることが多く、基本的に市町村の建築指導課で確認が可能です。
その他にも、インターネット検索が可能な市町村も増えていますし、その地域で活躍している「不動産会社」や「住宅会社」なら、知らないハズはありませんよ。
がけ地の定義とは
崖地(がけち)とは、水平面に対し30度(市町村による)を超える角度を有する面を持つ土地のこと。
幾つかの段によって上下に分断された土地で、「下層のがけの下端」から30度(市町村による)の角度の面の上側に「上層のがけの下端」がある場合は一体のものとみなされる。
「隣地」や「その土地に接する道路」との高低差が2m(市町村による)を超える土地では、建築許可を得るために様々な規制をクリアしなければならない。
擁壁があっても安心できない!?予算UPを防ぐチェックポイント
高低差の大きい土地を購入する際に最も注意して欲しいのが、
「そのままの状態で建物が建てられる範囲はどの部分なのか?」なんです。
エッ!がけ地の規制がかかっている土地には建物が建てられない範囲があるんですか!?
がけ地でなくとも、「壁面後退」や「北側斜線」などの規制によって、建物が建てられない範囲がある土地は珍しくありませんが、
高低差が大きく、がけ地の規制がかかっている土地では、さらに多くの条件を満たさないと建物が建てられないんです。
なんだ、条件をクリアすればマイホームが建てられるんですね。
何をしても建物が建てられない土地があるのかと思っちゃいましたよ。
笑い事じゃありませんよ!「条件のクリア」が容易でない土地も多いんです。
極端な場合、「予定していた半分の大きさの建物しか建てられなかった」とか、「建物が建てられない土地を買ってしまった」なんてことになりかねませんし、
建物を建てるために思わぬ追加工事が必要になることもあるんですからね。
エッ!そ、それは大変じゃないですか・・!
じゃあ、高低差の大きい土地を購入する際は、何に気を付けたらいいんですか?
では、高低差の大きい土地を購入する際のチェックポイントを紹介しましょう。
高低差が大きい土地(がけ地)のチェックポイント
- 宅地造成等規制法の検査済証が交付されているか
- 土地計画法(開発行為)の検査済証が交付されているか
- 土留めとなる擁壁(ようへき)に工作物確認申請の検査済証が交付されているか
- 行政より定められた急傾斜地崩壊防止工事の整備がされているか
- 既存擁壁に工作物確認申請の基準と同等以上の安全性を有する証明ができるか
基本的に上記のいずれかを満たしていれば、特に問題ありません。
①~④までは、その土地を管轄する行政の「建築指導課」や「宅地開発課」「土木事務所」で確認できるのですが、
⑤に関しては慎重な行動が必要となるので、注意してください。
どういうことですか?
頑丈な擁壁があれば問題ないんですよね。
そこが勘違いしやすいポイントなんですが、「擁壁があるのかないのか」ではなく、「擁壁の安全性を証明できるかどうか」が鍵なんです。
擁壁の安全性を証明するには、根拠となる図面などの資料が必須なのですが、その資料自体が存在しないことも多く、まず安全性が証明できなければ、そもそも建築許可の交付が受けられません。
もし安全性が証明できない場合、建物を建てるために何をしないといけないんですか?
既存の擁壁を取り壊して新たな擁壁を作る」か、「規制のかかる部分に建物を配置しない」か・・このどちらかが一般的ですね。
ですが、新たな擁壁を作るために数百万円の追加工事が必要になったり、もともと予定していた建物の形状を変えないと配置できないケースも多いので、
高低差の大きい土地を購入する際は、事前のチェックが重要なんですよ。
高低差の大きい土地の建築は何かとお金が必要!-まとめ
じゃあ、①~④までの検査済証がない土地で、擁壁の安全性が証明できなかったら、
大金をかけて擁壁を作り直す以外に建物を建てる方法はないんですか・・?
先ほど挙げた一般的な例の他にも、「建物の基礎を深基礎にする」とか、「支持杭などを使って建物を支える」などの方法で対処できることもありますが、結果的に高額な工事費用がかかってしまうのは同じですね。
そうでなくとも高低差が大きい土地では、たとえ図面が同じ建物でも、土地の状況次第で建物の建築費用がUPするケースも珍しくないんですよ。
エッ!土地に高低差があるだけで、同じ建物でも建築費用がUPすることがあるんですか!
高低差の大きい土地での増加が懸念される建築費用
- 地盤改良工事や基礎工事で必要な重機の搬入費用
- レッカー車やガードマンのレンタル費や人件費
- 建築資材の搬入費用
- 高さに関わる外構工事費用
- 既存建物の解体が必要な場合は廃材の搬出費用など
高低差の大きい土地では、普通の土地に比べて上記のような建築費用の増加が懸念されることが多く、
「せっかく土地を安く買ったのに、トータル費用が高くついた」なんてことにもなりかねません。
たしかに、どんなに土地が安くても建物の工事費用が高くなったら意味がありませんし、
予期せぬ工事で何百万円も必要になったら、資金計画どころかマイホームの計画自体がどうなることやら・・
やっぱり、素人に土地探しはハードルが高いんですかね。
建物の建築には様々な規制があり、中には購入後に気が付いて手遅れ・・なんてことも珍しくありません。
そんなトラブルを防ぐためにも、土地を契約する前に建築会社などの建物の専門家への相談を心掛け、「どんな建物が建てられる土地なのか」や「どの程度の費用UPが想定されるのか」を忘れずに確認しておきましょう。
それと、「近隣の相場より割安な土地には、建築費用UPなどの不利な条件があって当たり前」と思って土地探しをする、くらいの心構えでいたほうがイイですよ。
■ がけ地ではそのままの状態で建物が建てられない土地もある
■ 高低差の大きい土地では建築費用UPの危険性が高い
■ 土地を契約する前に建物の専門家への相談を忘れない