■ 屋根の雨漏りを防ぐためのチェックポイントに興味がある人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
屋根工事は高所での作業になるので、一般のお施主さんは工事の風景を自分の目で確かめることが難しい項目になってしまいます。
しかし、屋根の施工精度が悪いと雨漏りの原因になってしまいますし、建物の寿命にも直結してしまうので、決して無視できない大切なポイントです。
今回は、屋根工事での工程や手順・チェックポイントはもちろんですが、どうすれば雨漏りの心配が少ない屋根にできるかについてもご紹介したいと思います。
屋根工事の工程や手順と注意したいチェックポイント
①防水シート(アスファルトルーフィング)の施工
まず、屋根工事の手始めに行うのが、屋根の下地材となる野地板に雨水が侵入するのを防ぐための、アスファルトルーフィングと呼ばれる防水シートを貼っていく工程です。
この工程は、思わぬ雨で野地板が濡れることを防ぐ意味もあり、棟上げ当日に屋根職人さんが夕方から2時間程度で施工することも少なくありません。
それに、防水シートがないと屋根の仕上げ材を留める釘穴から雨水が入ってしまうので、野地板の腐朽や雨漏りを防ぐためにも欠かせない工程です。
何故なら、屋根の防水シートに使用するアスファルトルーフィングには弾性があり、釘穴程度であれば塞いでくれるので、雨水の侵入を防止することができるんです。
防水シートは幅が1m程なので少しずつ重ねながら施工するのですが、適切な重ね幅(上下方向100㎜・水平方向200㎜・立ち上がり部300㎜)を確保しないと雨漏りのリスクがUPしてしまいます。
なので、現場監督にしっかりチェックしてもらいましょう。
②瓦の下地(瓦桟)の施工
防水シートの施工が完了したら、瓦の下地となる瓦桟を施工する工程に移ります。
瓦桟には、「瓦同士の間隔を均等にして防水能力を向上させる効果」と「瓦のずり落ちを防ぐ」といった2つの役目があるのですが、
屋根の仕上げ材がガルバリウム鋼板やスレート(コロニアル)材の場合は瓦桟が必要ないので、この工程は省かれます。
一般的な瓦屋根の施工に必要な期間は2週間程なのですが、屋根の形状や広さによって大きく変わることもあります。
ですが、ほとんどの注文住宅では木工事と同時に進行するので、建物の完成に影響することはありません。
③棟換気の施工
次に、屋根裏や外壁の換気に必要な棟換気の部材の取付けを行います。
棟換気とは、「空気は暖かくなると上昇する」という特性を利用した換気システムで、
「低い位置にある軒先の給気口から入った冷たい空気が小屋裏で暖められることにより、屋根の一番高い場所に設けた排気口から暖められた空気と共に湿気が排出される」という大切な役割を担っています。
ですが、棟換気が正常に機能しないと小屋裏に湿気が溜まってしまうため結露を起こしやすくなり、木材の腐朽やカビ・白アリの原因となってしまうので、適切な設置が求められることを忘れてはいけません。
結露による建物の被害に気付くことは難しく、気付いた頃には既に被害が蔓延していることも多いので、
事前に結露対策をしておくことが、「予期せぬ補修費用の発生」や「建物寿命の短縮」を防ぐための重要なポイントとなります。
④軒先板金や谷樋の施工
次に、屋根の軒先や谷樋などに雨漏りを防ぐための板金を施工する工程に進みます。
雨漏りは建物に与える被害が大きいので、建物の寿命を延ばすためにも二重三重の対策が大切です。
なので、雨にさらされやすい軒先やたくさんの雨水が集中しやすい屋根の谷部分となる谷樋には、防水シートだけではなく、トタンやガルバリウム鋼板などの金属板を使った板金の施工が欠かせません。
特に、板金の工程の中でも屋根の接合部になる谷樋には雨水が集中しやすく、雨漏りの原因となりやすい場所なので、
施工に不備があってはならない、屋根職人さんの腕の見せ所と言えます。
⑤瓦(屋根の仕上げ材)の施工
屋根の雨漏りを防ぐ工程が全て完了したら、仕上げ材となる瓦の施工となります。
屋根の仕上げ材にガルバリウム鋼板やスレート材を選んだ場合でも、ここまでの工程にほとんど違いはありません。
屋根が完成すると、建物から立派な風格が漂ってきます。
この頃には、建物全体の工事も半分程度が終わっていると思うので、かなりマイホームの完成形も想像しやすくなっていますし、新しい生活に対する期待がドンドン現実味を帯びてくる頃です。
以前の瓦屋根には、たくさんの土を利用した土葺きが主流でしたが、瓦の落下や経年劣化の可能性が高いこともあり、
現在の注文住宅の多くは、今回紹介した引掻け桟葺き(釘留め)を採用しています。
雨漏りしにくい屋根とはーまとめ
瓦やガルバリウム鋼板といった屋根の仕上げ材が雨漏りを防いでいると思っている方も多いのですが、
実は、仕上げ材は雨の一部を防いでいるだけで、雨漏りを防ぐために本当に重要なのは「防水シート」や「谷樋などの板金」の施工精度なんです。
それに、よかれと思って取り入れたことが、逆に雨漏りを助長してしまうことがあります。
例えば、
屋根にトップライトを設けることは陽の光を取り入れるのに効果的なのですが、屋根とサッシ枠の接合部分に雨水が溜まりやすくなるので、雨漏りのリスクが高まってしまいます。
他にも、最近流行りの「軒先のない屋根」や「軒先の短い屋根」は見た目はスッキリとして洗練されているように見えるのですが、外壁と屋根の接合部に直接雨があたりやすいので、建物内へ雨水の侵入を許してしまい、雨漏りのリスクが高くなってしまいます。
末永くマイホームで暮らし続けるために、施工の精度はもちろん、雨漏りに対して弱点となりやすい部分を減らすことも重要なポイントなので、そういった部分にも配慮を怠らず、素敵なマイホームを手に入れて下さいね。
つまり、
- 谷樋を少しでも減らすために、外観が凸凹にならない間取りを計画する
- 雨漏りの弱点となる接合部に雨が直接当たらないように、軒先の出幅を長くする
- トップライトを設けなくても日の光が入るように、間取りを工夫する
- 屋根と外壁の接合部を減らすために、下屋(2階のない1階屋根)のない建物を計画する
上記のコツを意識すれば、雨漏りのリスクが少なく、建物寿命の長いマイホームを手に入れることができますよ。
ただし、雨漏りのリスクが少ない建物にすると、どうしてもシンプルな外観になってしまうので、特徴のない外観になってしまいがちなんですよね。
とはいっても、目を引く外観の建物は雨漏りの可能性が高いのでメンテナンス費用もバカになりませんし、雨漏りに気付くのに遅れてしまうと建物の寿命を縮めてしまうことになり兼ねない為、とても悩ましいところです。
なんて、ちょっと困惑させてしまうようなことを言ってしまいましたが、家づくりに絶対的な正解はありません。
当然、デザイン性を重視したい気持ちも分かります。
しかし、将来的なリスクも視野に入れたうえで計画を立てて下さいね。
屋根については設計者に任せっきりのお施主さんも多いのですが、末永くマイホームに住み続けるためにも、外観の見た目だけでなく、建物の「メンテナンス性」や「耐久性」にも気を配ることを忘れずに意識してみましょう。
■ 雨漏りを防ぐためには、仕上げ材よりも板金や防水シートの施工精度が大切
■ 施工精度だけでなく、屋根の形状などにも工夫すれば雨漏りは減らせる
■ 建物の屋根については設計者に任せがちだが、気を配ることを忘れない