■ 土地の売買契約後のトラブルを防ぎたい人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
家づくりでは、「情報収集不足」や「勘違い」「確認の怠り」などによって、予期せぬトラブルに巻き込まれることも珍しくありません。
例えば、土地を探している最中、「古い建物の解体工事さえなければ、立地条件はピッタリなのに・・」なんて土地を見つけたらどうしますか?
本来なら、既存建物の解体工事費を見込んだ資金計画さえ立てられれば、その土地を購入しても問題ないハズなのですが・・
知識不足で充分な対策が講じられていないと、「地中埋設物の撤去費用が自腹になってしまい、資金計画が大幅に狂ってしまう」なんてことになるかもしれません。
今回は、予期せぬ地中埋設物によるトラブルに巻き込まれないように、土地の売買契約前に心得ておきたい対処法について紹介します。
購入した土地の地中に埋設物があったらどうなるの?
でも、購入した土地に「隠れた瑕疵(かし)」が見つかった場合は、「契約解除や損害賠償の請求」ができるんじゃないですか?
地中埋設物(地中障害物)も隠れた瑕疵の一つですよね。
おっ!よくご存知ですね。
では、地中から出てきた物であれば、なんでも隠れた瑕疵になると思いますか?
そ、それは・・
でも、そのままの状態で予定していた建物が建てられないなら、隠れた瑕疵と言えるんじゃないのかな・・
たしかに、常識的な範囲で「土地の利用が困難」と判断された場合、隠れた瑕疵として認めてもらえる可能性は高いでしょう。
しかし、明確な判断基準がなければ、売主は契約解除や損害賠償を避けたいので、場合によってはトラブルに発展するかもしれませんよ。
まずは、戸建住宅の解体工事で発見されやすい、地中埋設物の主な例を見てみましょう。
戸建住宅の解体時に見つかりやすい地中埋設物
- コンクリートガラ
- 木炭ガラ
- 石・岩
- 浄化槽設備
- 井戸
- 油分
- 汚泥(汚染された土)
- 建築資材・ゴミなどの廃棄物
- 地盤改良杭
地中埋設物といえば、建物の基礎なんかのコンクリートガラをイメージしていましたが、いろんな物が該当するんですね。
土地の買主としては、何が見つかっても撤去して欲しいのが本音だけど、「建物が建てられない!」とまでは言い切れない物もありそうです。
そうなんです。私が担当させていただいたお客さんの中にも、購入した土地の建物解体時に小さなコンクリートガラが大量に見つかった方がいらしゃいました。
ですが、土地の売主との話し合いが上手くいかず、そのままでは建築工事に遅れが出てしまうので、泣く泣く自腹で埋設物を撤去するハメになってしまったんです。
その際の解体工事の追加費用が30万円ほどでしたが、地中埋設物の規模や深さによっては、もっと高額になりかねませんからね。
30万円でも大金ですよ・・追加費用によっては建物のグレードダウンどころでは済まないかもしれませんね。
建築予算の少ない我が家だったら、どうなることやら・・
まあまあ、ちゃんと契約前に土地の売買契約書をチェックをしておけば、そんなに心配する必要ありませんよ。
土地の売買契約時は内容のチェックが肝心!
売買契約時のチェックと言われても・・
素人の僕には、どんなことに注意すべきか分かりませんよ・・
たしかに、契約書の文言は言い回しが難解ですし、慣れないと判断が難しいですよね。
それに、「売主は土地の隠れた瑕疵の責任を負う」というような曖昧な表現の契約書では意味をなさないこともあるので、ある程度は具体性のある記載が望ましいですね。
具体性って言われても・・
それに、契約書の内容がちょっと気に入らないくらいで、せっかく見つけた土地を諦められないですよ。
(「契約書の内容がちょっと気に入らないくらい」って・・そこが肝心なんだけど・・)
では、契約書に特約の追加をお願いしてみてはいかがでしょう。
例えば、「地中埋設物により通常の土に比べて高額な処分費用が発生する場合は瑕疵にあたる」といった意味の特約を設けてもらえば、トラブル回避に役立ちますよ。
それに、土地の売買契約を交わす前であれば、買主の方が強い立場にあるので、自身に有利な特約を盛り込んでもらうチャンスなんです。
なるほど!自分の立場が有利なうちに、自分が不利にならない内容を売買契約書に追加してもらえばいいんだ!
契約書にサインしてからでは手遅れですもんね。
あと、売買契約書によっては、隠れた瑕疵による契約解除や損害賠償に有効期間を設けている場合があるので、注意してください。
注文住宅を建てる場合は特に、土地を購入してから既存の建物を解体するまでの期間が長くなる傾向があります。
地中埋設物の発見時に特約の有効期間が過ぎていては、契約前の交渉が無駄になってしまいますよ。
はい。家族のためにも、契約書のチェックに抜かりがないように心掛けます!
築年数の新しい建物の建て替えにも注意!ーまとめ
先ほども少し触れましたが、既存建物の解体時に、地盤補強の改良杭が地中埋設物として撤去対象になるかもしれないんです。
えっ!?地盤改良って建物を支えるために行うんですよね・・?
すでに地盤の強化がされているなら、そのまま再利用できないんですか!?
過去の事例では、強度検査によって新しい建物を支えられることが認められ、そのまま再利用したケースもあるんですが、
地盤改良杭の長さや本数は建物の構造や形状・自重を基に設計するので、新しい建物を支える強度が不足していると判断された場合、古い改良杭の撤去が必要になることがあるんです。
そんなこと思ってもみませんでした・・
いつ頃に建築された建物に注意すればいいんですか?
そうですね・・阪神大震災後の2000年に建築基準法が改正されて地盤調査が事実上必須となり、地盤の弱い土地での地盤改良が必要になったので、それ以降に新築された建物では特に注意しておきたいですね。
それに、万が一既存の改良杭を全部撤去するとなると、200~300万円の費用が必要と言われています。
200~300万円って・・
でも、基本的には「隠れた瑕疵」になるので、契約解除や損害賠償の対象になるんですよね?
「隠れた瑕疵」に認定されるべき事例でも、判断基準が明確でないと訴訟になるかもしれませんし、もし売主に支払い能力がなければ、建築工事のストップを余儀なくされるかもしれません。
それに、事前に既存建物の地盤改良工事の有無が分かっていれば、売買契約前なら撤去費用を見込んだ値引き交渉も可能ですよ。
知識がなければ事前対策すらできませんが、これで対処できそうです。
気軽になんとかできる金額じゃありませんし、「備えあれば患いなし」の精神を心掛けます。
必ずしも神経質になり過ぎる必要はありませんが、家づくりの情報不足は思わぬトラブルに繋がりやすいのも事実です。
大切なポイントを見逃さないように注意してくださいね。
■ 売買契約書に具体的な特約を設けておけばトラブル回避に役立つ
■ 土地売買の契約内容は売主と買主の同意があれば変更可能
■ 地盤改良履歴のある土地の購入時には特に注意が必要