■ 建築確認申請での中間検査について知りたい人
■ 家づくりで失敗や後悔をしたくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
建物の工事が始まり、日に日にマイホームが完成に近づくのを想像するとワクワクしますよね。
お施主さんの中には工事の進捗状況が気になり、仕事が休みのたびに建築現場を訪れる方も少なくありませんし、現場の近くにお住いで日課のように通っている方もいらっしゃいます。
ですが、せっかく建築現場に足を運んでも、建物を建てる工程や流れを知らないと、職人さん達に声をかけるタイミングが掴みづらく現場を楽しめないかもしれません。
今回は、少しでも現場を楽しんでもらえるように、木工事での工程や流れについてまとめてみました。
棟上げ完了後の木工事の流れ
棟上げで大まかな骨組みが完成した翌日からは、建物の肉付けとも言える木工事の工程に移ります。
建物の規模や仕様・大工さんの人数によって必要な期間は変わってきますが、一般的な2階建て30坪前後の建物なら30~40日位が目安となります。
間柱・窓台・まぐさの施工
まず最初に行うのが、構造用合板の下地となる間柱(柱と柱の間に取り付ける木材)や外部サッシの下地となる窓台(窓下の受け材)・まぐさ(窓上の下地材)を施工する工程です。
棟上げの工程ではたった1日で建物の全景が現れるので、「木造の建物はこんなに早くできるんだ。」と感じるかもしれませんが、
これから先の工程は細かい作業も多く、目を見張る早さで工事が進むことはほとんどありません。
以前は、大工さんが現場で加工する木材の種類も多かったのですが、
プレカット技術が進んだ現在では、間柱や窓台・まぐさも加工済みの状態で現場に届くことも多くなり、木工事に必要な期間も短くなってきました。
筋交い・構造用合板の施工
間柱・窓台・まぐさなどの施工が完了したら、建物の強度を増すための構造用合板や筋交い(斜めに設置する木材)を施工する工程です。
構造用合板や筋交いの数は計算によって算出されており、取付ける箇所は建物のバランスを考えて決定されています。
以前までの木造軸組工法では、主に筋交いを用いて建物の強度を高めていましたが、
構造用合板が発達した現在では、木造軸組工法でも2×4(ツーバイフォー)工法と変わらない強度や気密性を確保できるようになりました。
構造金物の施工
建物の強度を負担する構造材の補強や脱落防止のために、金属製の金具を取付ける工程です。
現在の木造住宅では、柱や梁・筋交いなどの構造材の接合部には必ず構造金物を取付ける必要があります。
構造金物は指定された本数の専用ネジを用いないと強度が保てませんし、
後で取付けることもできないので、事前のチェックが大切になります。
屋根の破風(はふ)・鼻隠し下地の施工
屋根の破風(はふ)や鼻隠しの下地を取付ける工程です。
破風という言葉は聞き慣れないと思いますが、屋根の妻側(山形側)に垂直に取付けられる幅広の部材の名称で、軒の先端に取り付けられる部材を鼻隠しと呼びます。
破風の形や軒の出幅によって屋根の印象は大きく変わるので、
建物の外観を重視したい場合は、屋根の造りにもこだわることをおススメします。
サッシ枠の施工
構造材の施工が完了したら、外壁側の鋼製サッシ枠を取付ける工程に進みます。
サッシ枠と同時に玄関扉の取付けも行うのですが、この工程まで進むと建物の戸締りができるようになるので、建物内に入るためにはコンスキーと呼ばれる工事用の鍵が必要になります。
「工事用の鍵をコピーされたら・・」とマイホームの鍵の心配をされる方がいらっしゃいますが、
本キー(本来の玄関鍵)を差し込むとコンスキーは使えなくなる仕組みなので、鍵をコピーされる心配はありません。
透湿防水シートの施工
外壁の構造用合板の施工が完了したら、外壁工事の前に透湿防水シートの工程に移ります。
透湿防水シートとは、水は通さずに湿気(水蒸気)だけを通す性質をもつ薄いシートのことで、建物を雨から守ったり、壁内(柱の厚み分の空間)の結露を防ぐ効果があります。
建物の壁内が結露によって湿ってしまうと、断熱材の性能低下や木材の腐食が進んでしまうので、
建物の寿命を縮めないためには、隙間のない透湿防水シートの施工が必要不可欠となります。
野縁(のぶち)の施工
建物外部の雨仕舞(透湿防水シート施工など)が完了したら、木工事の内部工程に進みます。
野縁(天井下地)施工のタイミングは、使う建材(木材・金属など)や大工さんによって変わりますが、室内の木工事の中では比較的早い段階に行う工程です。
野縁の施工精度が悪いと天井が凸凹になってしまうので、太陽の光や照明が天井に当たった際に歪んで見えることがあります。
野縁の施工精度は、大工さんの腕の見せ所とも言えるんです。
フローリングの施工
続いて、フローリングの施工を行います。
フローリングには「さね」と呼ばれる凸凹があり、凹部分に隠し釘を打った後に凸部分を差し込んで留めていきます。
フローリングを貼りながら傷を防ぐための養生材も貼り進めるので、建物が完成するまで床の全景を見ることはできません。
意外とフローリングは傷つきやすい部材なので、お施主さんにとっては嬉しい配慮ですね。
内部階段の施工
意外かもしれませんが、内部階段を施工するのは木工事でもずいぶん終盤の工程です。
内部階段が組み上がるまではハシゴを使わないと建物の2階に上がれないので、安全に配慮している住宅会社はお施主さんが2階上がるのを嫌うのですが、これで2階からの眺めや間取りの雰囲気を実際に見られるようになります。
以前は、階段一段の高さや幅を大工さんが計算して組み上げていましたが、
最近は、建材メーカーに細かな寸法を発注する「ユニット階段」が主流になっているので、木工事に必要な期間も更に短くなりました。
各種下地の施工
内壁の石膏ボードを貼る前に必ず行わないといけないのが、補強のための下地材を施工する工程です。
エアコンや壁掛けテレビなどの重力物を壁に固定する場合や手摺りなどの強度が必要な部材を取付ける場所には、壁の中に下地を仕込んでおかないと強度不足でグラついたり、脱落してしまう恐れがあるので、下地材の施工は欠かせません。
設計打合せの際には、将来的なライフスタイルの変化による模様替えにも対応できるように、下地を追加しておくことを忘れないでおきましょう。
建築基準法による建物の中間検査とはーまとめ
木工事も進み、建物の構造に関わる部分の工事が完了すると、建築基準法による建方工事の中間検査があります。
中間検査の有無は各都道府県によって基準(建物の構造や階数・規模など)が違うのですが、ほとんどの木造2階建住宅は検査の対象となっています。
時期的な目安となるのは防蟻工事が完了した頃なのですが、行政もしくは指定確認検査機関の検査官によって現場検査が行われます。
主な検査の内容は、「柱や梁などの構造部材のサイズ・配置」や「建築金物の種類・配置」など建物の構造や強度に関することが中心です。
中間検査に合格しないと次の工程に進むことができませんし、完了検査を受けることができなくなってしまうので欠かせない検査なのですが、
検査の時間は一棟当たり30分~1時間と短いので、検査に合格しても100%安心できる訳ではありません。
家づくりでは初めて経験することが多く、疑問や不安を感じると思いますが、
もし、気になることがあれば、放っておいても解決しないので、恥ずかしがらずに住宅会社の担当者や現場監督などに質問しましょう。
意外と簡単に解決できることも少なくありませんし、仮に問題がなくても、聞くことで理解が深まります。
そうやって積極的に、一つ一つのハードルを越えていくことが、楽しみながら満足できるマイホームを手に入れるコツなんです。
具体的な家づくりに関するご質問やご相談があれば、「お問い合わせフォーム」や「コメント欄」から問い合わせていただければ、
建築士の目から見たご返答をさせていただきます。
■ 工事で分からないことは、現場監督や職人さんに積極的に質問しよう
■ 建築基準法による中間検査では、第三者が建物の構造部分や建築金物などの検査を行う
■ 中間検査の時間は短いので、検査に合格したからと言って100%安心できる訳ではない