■ 「水抜き穴」のデメリットをなくした施工方法に興味がある人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
以前、ブログの読者さんから「工事中のマイホームの基礎工事」について、ご相談のメールを頂戴しました。
その際、一般的な戸建住宅の基礎工事では、基礎の立ち上がり部に「水抜き穴」を設けることを解説したのですが、
実は建物完成時に、この「水抜き穴」を「塞ぐ」か「塞がない」かは、住宅会社の見解によって異なるのが現状です。
何故かと言うと、基礎の「水抜き穴」を「塞ぐ」か「塞がない」かによって、得られる「メリット」や「デメリット」が大きく違うからなんです。
今回は、戸建住宅の基礎の「水抜き穴」について解説しながら、双方いいとこ取りの施工方法を紹介します。
基礎の立ち上がりに設ける水抜き穴の役目とは
以前の記事でも紹介しましたが、
現在の戸建住宅では「ベタ基礎」と呼ばれる、基礎全体を一体化する工法の採用が主流となっています。
この「ベタ基礎」のメリットの一つに、「敷地の土から上がってくる湿気をシャットアウトして床下に取り込ませない」というものがあります。
しかし、その反面、「基礎内部に水が溜まってしまうと容易に排出できない」というデメリットを受け入れてしまうことになるんです。
このデメリットは建物完成後だけでなく、工事中でも問題となることがあります。
というのも、基礎内部に水が溜まったまま床板を貼ってしまうと、水の逃げ場がないことが原因となり、常に床下が湿潤状態を保ってしまうため、
「構造材や床板の腐食」や「カビの繁殖」の原因になってしまうんです。
もちろん、そんな不具合を許す訳にはいかないので、基礎内部の水を排出するのですが、
「水中ポンプ」や「人力」を使っての排出となると、非常に多くの「時間」や「手間」が必要になります。
なので、放っておいても水が抜けるように、基礎工事の際に立ち上がり部分に「水抜き穴」を設けておくことが一般的となりました。
このような理由から、「ベタ基礎」に設けるようになった「水抜き穴」ですが、
全ての工事が完了した際、「塞ぐ」か「塞がない」かで異なった不具合が発生することがあるんです。
まずは、それぞれの「メリット」と「デメリット」を見てみましょう。
水抜き穴を残すメリット・デメリット
◇メリット
- 漏水などによって基礎内部に溜まった水を容易に排出できる
◆デメリット
- 外部から基礎内部に水が入りやすい
- シロアリなどの侵入経路になりやすい
水抜き穴を塞ぐメリット・デメリット
◇メリット
- シロアリなどの侵入経路が減少する
- 外部からの水の侵入リスクを軽減できる
◆デメリット
- 漏水などの原因で基礎内部に溜まった水の排出が困難
建物完成後の水抜き穴による不具合とは
それぞれの「メリット」と「デメリット」を見ると分かるように、全てが相反していますよね。
このような理由から、建物完成後に基礎の「水抜き穴」を「塞ぐ」か「塞がない」かは、それぞれの住宅会社で見解が大きく異なるんです。
というのも、マイホームの床下を頻繁に点検する方は非常に少ないので、床下で給排水配管の漏水が発生したり、排水溝の詰まりなどによって床下に水が溜まってしまっても、気付くことはほとんどありません。
ですが、気付かずに放っておくと建物に甚大な被害を与えてしまう、というのは前述したとおりです。
このような不具合を重く考える住宅会社は、万が一床下に水が溜まっても、自然に外部に水が排出されるように、基礎の「水抜き穴を塞がない」ことを良しとします。
しかし、基礎の「水抜き穴」を塞がないと、外部から水が入りやすくなってしまったり、シロアリなどの虫害を招きやすくなると考える住宅会社もあります。
そういった不具合に重きを置く住宅会社は、基礎の「水抜き穴を塞ぐ」ことを良しとするんです。
これは見解の違いなので、一概にどちらが優れているとは言えません。
中には、「ここまでこだわる必要はない!」という意見もあるのですが、「ここまでこだわることができるのも注文住宅ならでは」と言えます。
なので、もしマイホームの「水抜き穴」の処理方法が気になるようなら、住宅会社に確認しておきましょう。
そして、「その住宅会社の標準仕様」と「自分の考え」が違った場合、変更できるかどうか相談してください。
このような施主の要望に応えられるのも、注文住宅ならではなのですから。
注文住宅での家づくりに失敗しないコツは、「疑問に思ったこと」や「分からないこと」を放っておかずに、納得できる答えを探すことです。
もし、住宅会社の担当者に聞きづらい内容であれば、私に相談ください。お一人おひとり、返答させていただきます。
最後に、双方いいとこ取りの施工方法を採用している住宅会社もあるので、その施工例を紹介しておきますね。
双方のメリットを取り入れた基礎の施工例ーまとめ
基礎の立ち上がり部に「水抜き穴」を設けることは、基礎内部に溜まってしまった水を容易に排出できる反面、外部から水が入ってしまう危険性も避けられません。
なので、このような不具合を防ぐには、基礎の外周部に「水抜き穴」を設けること自体がNGとなります。
ですが、上記の写真のように基礎の底板部に「水抜き穴」を設ければ、外部から基礎内部への水の侵入を防いだ上で、基礎内部に溜まった水を排出することが可能なんです。
それに、基礎底板用の「水抜き穴」には、シロアリの侵入を防止するための措置を施した製品も開発されています。
ですが、これだけでは不十分なんですよね。
と言うのも、基礎の「ベース部分(床)」と「立ち上がり部分」は一体化しているように見えるので、水が通らないと思われがちですが、
実は、完全に一体化しているわけではなく、「ベース部分」と「立ち上がり部分」の「打ち継ぎ部(目には見えない隙間)」から水が侵入することは珍しくありません。
なので、住宅会社によっては、「打ち継ぎ部」に防水材を塗布したり、「打ち継ぎ部」のない「一発打ち(打設)」と呼ばれる工法を採用していることがあります。
ですが、防水材の耐久年数は10年程なので、メンテナンスが必要となりますし、「一発打ち」は施工できる業者が限られている上に、工事費用も割高なんです。
その解決策として、工事費用が安価で、なおかつメンテナンスフリーな施工方法として、下記のような製品を使ったものがあります。
この工法は基礎工事の際、薄い鉄板を基礎の「打ち継ぎ部」に仕込んでおくのですが、手間が少なく施工も簡単なので、工事費用もそれほどUPしません。
近年の建築技術の進歩には目を見張るものがあり、少し工夫すれば「デメリット」を減らし、「メリット」を最大限に生かすことが可能です。
それに、住宅会社によっては細部までこだわり、少しでも暮らしやすい建物を作る工夫に余念がない会社もあるので、
「安いから」や「有名だから」といった部分だけでなく、建物に対する「取り組み」や「情熱」に注目して住宅会社を選ぶのも、家づくりに失敗しない秘訣と言えるのではないでしょうか。
■ 「水抜き穴」を「塞ぐ」か「塞がない」かで得られる「メリット」や「デメリット」は相反する
■ 建物完成時の「水抜き穴」の施工方法は、住宅会社の見解によって異なる
■ 双方のメリットだけを得られる工法も存在する