■ マイホームの基礎工事に問題がないか心配な人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
ブログの読者さんから、「工事中のマイホームの基礎工事」に関するご質問を頂きました。
ご相談者の方には直接メールで返信させていただきましたが、同じ悩みで困っている方のためにも、ブログで紹介させていただきたいと思います。
現在、土地から購入して新築を建築中です。
先日、基礎の平面に家の間取りがわかるように枠に入ったコンクリートが出来ていたのですが、
コンクリートに所々「気泡?」や「穴?」のようなものが見えました。
もしかしたら、ジャンカかもしれないと心配になり、自分なりにインターネットで調べたのですが、その確信が持てません。
私達には判断が難しく、現場の方に会うことも難しい状態です。
もし、ご相談が可能でしたら、写真を添付して送りますので、確認していただきたいと思っています。
※相談内容を抜粋して掲載しています
ご自身のマイホームに不具合の懸念を感じてしまうと、気が気ではありませんよね。
それに、「ジャンカ」や「豆板(まめいた)」などの程度によっては、将来的に「鉄筋の腐食(錆)」や「コンクリートの中性化が早まる」など、マイホームの強度的な不具合の発生に繋がるので、不安を感じるのはもっともだと思います。
写真では立体感が掴みづらいため、実物を見るのと違って判断が難しくなるのですが、気になる部分の「範囲(大きさ)」や「場所」「数量」など、具体的な状況を知るために、できるだけたくさんの写真を送っていただきました。
基礎の立ち上がり部分に穴?
では、ご相談者さんが気にされていた指摘部分(赤い丸)の写真を見ながら、順に解説したいと思います。
上記の写真の指摘部分は、どちらも基礎内部に溜まった水を排出する「水抜き穴」と呼ばれるものです。
基礎の形状から察すると、玄関ポーチのようなので、今後の「雑コン(土間打ち)」の工程により埋まってしまいますし、強度的な心配もありません。
上記の写真の指摘部分も、「水抜き穴」として設けられた開口のようです。
このように、基礎外周の立ち上がり部分に「水抜き穴」を設ける理由は、雨によって基礎内部に溜まってしまった水をスムーズに外部へ排出するためです。
というのも、今後の「土台引き」や「上棟」といった工程が完了すると、基礎にフタをした状態になるため、床下に水が溜まっていては自然乾燥が期待できません。
その上、床下に水が溜まったまま放置してしまっては、「建物の構造材(土台・床合板等)の腐朽による耐力低下」や「床下のカビの増殖」など、様々な不具合の発生にも繋がります。
それに、基礎外周部に「水抜き穴」を施工していなければ、雨が降る度に基礎内部がプールのようになってしまうため、水を向く作業だけで手一杯になり、工事どころではなくなってしまうんです。
上記の写真の①は基礎の「水抜き穴」のようですが、②はコンクリートに含まれる「骨材(砕石等)の脱落による凹み」と推察されます。
上記のようなコンクリートの凹みについては、その深さによって基礎内部に施工されている鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚(基礎立ち上がり部40㎜以上、土に接する部分60㎜以上)が不足することも考えられるので、
凹みが深いようなら、「ポリマーセメント」や「無収縮モルタル」といった補修に適した材料を用いて、かぶり厚が確保できるように補修しなければなりません。
しかし、一般的な基礎工事では10㎜程度のかぶり厚を余分に見ていることが多いので、少々の凹みであれば、それほど神経質になる必要はないでしょう。
それと、「水抜き穴の最終的な処理の方法は住宅会社によって異なる」というのはご存知でしょうか?
というのも、万が一床下に水が溜まった際に対処しやすいように、「水抜き穴」を塞がず残しておく住宅会社もあれば、
逆に外部からの水の侵入を防ぐ為に、標準施工として「水抜き穴」を塞ぐ住宅会社もあるんです。
これは住宅会社の見解の違いによるところなので、一概にどちらがよいとは言えないため、また別の機会に紹介したいと思います。
基礎のコンクリートに気泡?
上記の写真の指摘部分を拡大したのが下記の写真です。
写真だけでは立体感が掴みにくいので、赤丸の部分が凹んでいるのかどうかが判断しにくいのですが、
基礎工事の工程から推測すると、この部分が大きく凹むことは考え難いことが分かります。
何故かと言うと、一般的な戸建住宅の基礎工事では、基礎の底盤部分(床部分)のコンクリートが硬化し、基礎の立ち上がりの型枠を組んだ後にコンクリートを打設するので、
基礎の「底板」と「立ち上がり」の打ち継ぎ部が凹むことは、まずあり得ないんです。
なので、基礎立ち上がりのコンクリートを打ち込んだ際に型枠から染み出たノロ(セメントペースト)が固まった「バリ」の可能性が高いことが分かります。
ということは、凹みではなく盛り上がっている状態なので、基礎の強度に心配はありませんし、
バリであれば簡単に取り除けるため、この後に行われる「基礎の仕上げ」の工程で解消されると予測できます。
上の写真③の部分も基礎の立ち上がり部分のコンクリートを打ち込んだ際にできた「バリ」のようなので、強度の低下に対する心配は必要ありません。
それに多くの戸建住宅では、建物完成間近になると基礎の立ち上がり部分に「モルタルの刷毛引き」や「弾性塗料の塗装」といった化粧を行うので、「見栄え」に対しての心配も不要です。
もし、マイホーム完成時の基礎の見栄えが気になるなら、住宅会社の担当者に「基礎仕上げの仕様」を確認しておきましょう。
次に写真④の部分ですが、これは先程の②の部分と同じような現象のようです。
しかし、④は②に比べて少し凹みが深いようなので、「ポリマーセメント」や「無収縮モルタル」を用いた補修が必要かもしれません。
この記事を読んで、「こんな細かい所まで施主がチェックしないといけないの・・」と、感じさせてしまったかもしれませんね。
もちろん、一般的な基礎工事業者なら、指摘をしなくても基礎工事完了時の自主点検で補修を行うハズなので、ご安心ください。
ですが、もし気になるようであれば、現場監督にその旨を伝え、住宅会社の「対処法」や「考え方」を確認するとイイかもしれません。
そうすれば、「なんとなく不安・・」という気持ちを払拭できると思いますよ。
今回のご相談者さんの場合、写真から現場状況を推察する限り基礎工事完了前なので、これから先の工程で補修されるのが一般的です。
今回、写真を拝見する限りでは、大きな問題が見つかりませんでした。
このことをお伝えしたので、ご相談者の方にも安心していただけたようです。
初めての家づくりでは、「知らないこと」や「疑問に思うこと」がたくさん出てくると思いますが、できるだけ早く対処し、納得できる解決法を見つける、それが後々の「後悔」や「失敗」を防ぐことに繋がります。
その後もご相談者の方と何度かやり取りをしたので、その内容も紹介させていただきますね。
返信くださりありがとうございました。
書き込んで頂いた箇所のうち、心配する必要がないものと現場の方に確認が必要な点が分かり安心いたしました。
水抜き穴というものがあるんですね。知らずに心配していましたが、返信頂き安心しました。
(どういう風に修復しないとい けないのか…これが一番の心配事でした)(基礎やり直してもらわなきゃいけないのかな…とか思ってました)
私のような素人は、しみゆうさん達から考えると本当に基本的なことも分かってないのだなぁと思います。
今後、譲渡式の際に住宅会社の現場監督とお会いするのですが、その際にこちらの意思を伝えるのでは遅いでしょうか。
基礎が隠れて見えなくなってしまうのは、どのタイミングでしょうか?
ご返信いただけると助かります。
※相談内容を抜粋して掲載しています
「戸建住宅の基礎工事」についての詳細へは、下記のリンクから移動できます。
住宅会社に自分の意思を伝えるタイミングは何時?ーまとめ
家づくりの最中に、気になる「疑問」や「不安」を感じても、「何となく聞きずらい」とか、「どのタイミングで伝えればいいのか分からない」なんてことが多いと思います。
今回のご相談者の方も、「クレームと思われたくない!」という気持ちが強く、早く伝えるべきかどうか躊躇していらっしゃったようなので、下記のような返信をさせていただきました。
今回のご相談内容であれば、基礎の仕上げの工程で補修をするのが理想的ですし、現場の職人さん達も対応しやすいので、できるだけ早く現場監督に連絡する方がいいと思います。
というのも、基礎の内部は上棟が終わってからでは確認が難しく、補修するために手間も費用もかかってしまうので、
住宅会社によっては「この程度なら問題ないですよ」と言われてしまうかもしれません。
(メールではニュアンスを伝えるのが難しいのですが、今回の写真で見る限り、確実に施工不良と言い切れる部分はなく、しいて言えば「写真の④⑤の部分が気になる」といった感じです。)
※工事は今後も続くので、住宅会社と友好的な関係を保つことは大切だと思います。
※しかし、「きちんと工事の内容を見ていますよ。」という意思表示は、もっと大切だとも思います。
それに、今日の段階で基礎の仕上げが終わっていないのなら、今後の基礎の仕上げを行う工程で同時に補修できるので、最小限の手間や費用で補修が行えるため、住宅会社としても有り難いハズなんです。
ただ、④のような建物外周の基礎の補修なら、上棟後であってもそれほど手間も費用も必要ないので、慌てる必要はありません。
それに、写真⑤が基礎のエグれではなく、基礎の内部にそれ以外の問題がないようなら、建物の足場を解体する頃までは基礎外部をチェックすることができます。
建築工事では工程が進むと隠れてしまうため、不具合の発見や是正を見落とす危険性が高まってしまう懸念もあるので、気になることは早めに対処することをおススメします。
補修を依頼するにしても、できるだけ早く伝えた方が住宅会社の対応が良心的な傾向にあるのも事実なんです。
それと、家づくりに失敗しないためには住宅会社の協力が不可欠なので、より良い関係を保つためのバランス感覚も大切だと思いますよ。
承知しました。では、今日の夕方、もう一度現場を見に行って、同じ状況であれば(もっと奥まで見れそうなら見てみます)ハウスメーカーさんに連絡を取ってみます。
ハウスメーカーの営業さん・工務担当さん・インテリア担当さんとはLINEのグループがあるので、写真を添付して相談してみます。
しみゆうさんが言われるとおり、専門知識がない状況での質問は、今回のような場合は特にクレームと取られそうで心配でした。
また、伝えても専門の方が「問題ない」と言われたら何も言えなくなりそうで不安な気持ちもありました。
なにより、今後も長い付き合いが必要な関係となるため、支障が出ないか心配でした。
しみゆうさんが言われた、良い関係を保つことと、見てるという意思表示、両方大切ですね!
心に留めて連絡を取ってみようと思います。
ありがとうございました。
ご丁寧にお返事までいただき、ありがとうございました。
「住宅会社に気を使い過ぎなんじゃ・・」と感じるかもしれませんが、
工事が進んでから写真などで指摘をしても、工期に影響したり、補修に大幅な「手間」や「費用」が必要になるので、どうしても住宅会社の対応が鈍くなりがちなんです。
それに、「専門的な知識」や「過去の事例」を知らないと、住宅会社の担当者に「建物に影響はありません」や「こんなもんですよ」というような返事をされたときに反論できませんし、
そのことによって信頼関係が崩れてしまうと、その後の住宅会社との付き合いが疎遠になってしまったり、極端な例を挙げると訴訟にもなりかねません。
家づくりでは、住宅会社との関係を円滑に保つ工夫も大切だと思います。
特に、規模の小さな住宅会社ほど、その後の対応が大きく変わる傾向があるので、合わせて意識しておけば、いざという時に役立つかもしれません。
■ 「専門的な知識」や「過去の事例」を知らないと、思うような対応をしてもらえないことがある
■ 工事中の指摘が遅れると、住宅会社の対応が鈍くなりやすい
■ 住宅会社に「工事中も見ていますよ」という意思表示をすることも重要