■ マイホームの「断熱性能」や「省エネ性能」に興味がある人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
こんにちは!建築士のしみゆうです。
マイホームを購入するにあたって、「夏涼しく、冬暖かい家」に興味がない方は少ないと思います。
以前、住まいの温熱環境の実態についてご紹介したのですが、
今から21年以上前には、そもそも手に入れたくても、「温熱環境のいい家が、建設当時世の中になかった」というのが実状でした。
ですが、建築技術の進んだ現在、その気になれば「温熱環境のいい家」を手に入れることは、それほど難しくありません。
しかし、築0~10年の比較的新しいマイホームに住んでいる方々でも、「温熱環境」や「温熱環境のいい家」に対しての認知度はまだまだ低いらしく、
「知らなかった」や「重視していなかった」という理由で、せっかくマイホームを手に入れたのに「温熱環境のいい家を購入できなかった」と「失敗」や「後悔」を感じている方が後を絶ちません。
確かに、「温かさ」や「寒さ」といった温熱環境による温度の感じ方は個人差も大きく、
「温熱環境のいい家が欲しい」と思っても、今の住宅業界では住み比べることはおろか、試しに体感してみることさえ難しいのが実状です。
それに、「自分の過去の経験」や「曖昧な一般論」だけでは、いくらマイホームの温熱環境に力を入れても、新居に住み始めてから「こんなハズじゃなかった・・」と「失敗」や「後悔」を感じてしまうリスクが高くなってしまいます。
せっかくの「一生に一度かもしれない家づくり」なのですから、新居に住み始めてから「失敗」や「後悔」を感じないようにしたいものです。
今回は、現在の住宅業界で温熱環境の指標とされている、Q値(熱損失係数)UA値(外皮平均熱貫流率)といった、「断熱性能」の目安を説明しながら、
「温熱環境のいい家」を手に入れる方法についてご紹介したいと思います。
Q値(熱損失係数)・UA値(外皮平均熱貫流率)とは?
でた~!「Q値」に「UA値」・・建築用語って難しいんですよね~
私も住宅営業マンの人に説明されたような気がするけど、何を言っているのかチンプンカンプンで、全然覚えてません。
「Q値」や「UA値」は、建物の「断熱性能」や「省エネ性能」を比較するにはいい指標なんですが、確かに取っ付きにくいですよね。
それに、温熱環境のいい家を手に入れるためには、「どうやって計算されているか」よりも、「どうやって比べたらいいのか」が大切だと思うので、
まずは、建物の温熱環境の「比べ方」や「目安」を中心に説明したいと思います。
そうなんです!数値の計算方法なんてどうでもいいんです。
私達には、「暮らしやすい快適なお家」をどうやったら見分けられるかの方が大事なんです。
・・とは言っても、概要ぐらいは知っておきたい人もいるかもしれないので、簡単にまとめておきましょう。
「比べ方や目安だけでイイ!」って人は、読み飛ばしてくださいね。
あれっ?なんだか似てますね。
建物の熱損失量を「延べ床面積」で割るか、「外皮面積」で割るかだけの違いですよね?
そうなんです!いいところに気が付きましたね。
厳密に言うと少し違うのですが、「Q値」も「UA値」もよく似ているところがあって、数値が小さい程「断熱性能」や「省エネ性能」が高く、「温熱環境に配慮された家」と言えるんです。
なので、まずは「Q値やUA値の数値が小さい程、断熱性能や省エネ性能が高い」と覚えておいてくださいね。
Q値(熱損失係数)・UA値(外皮平均熱貫流率)の違い
じゃあ、なんで「Q値」と「UA値」を使い分けるんですか?
どっちも「数値が小さい程、温熱環境がいい」のなら、使い分ける必要はないですよね。
これまた、いいところに気が付きましたね。
実は、「Q値」の計算方法では不公平が出ることが分かったので、その不公平をなくすために、新たな「断熱性能」や「省エネ性能」を示す指標として、「UA値(外皮平均熱貫流率)」が使われるようになったんです。
上の図を参考にしてもらえると分かりやすいのですが、
Q値を計算する際は、「同じ断熱性能の材料」を用いて建物を建てても、熱損失量を延べ床面積で割るため、同じ延べ床面積であれば、熱損失量の少ない、「単純な形状の建物」や「外壁・屋根(天井)の小さな建物」の方がQ値は小さくなります。
それに、同じ形状の建物なら、延べ床面積が大きい程、Q値が小さくなってしまうんです。
そんな「Q値」の弱点を利用して、自社の建物の温熱性能を高くみせるために、自社のQ値のモデルケースには単純な形状で、延べ床面積の大きい建物を使用する住宅会社が後を絶たなくなってしまいました。
これだと単純にQ値を比べただけでは、建物の「断熱性能」や「省エネ性能」の目安になりませんし、実際にどちらの性能が高いかを見分けることもできません。
そこで、建物の延べ床面積だけでなく、「外壁」や「屋根(天井)」の面積を足した「外皮面積」で算出される「UA値」が注目され始めました。
「UA値」なら、建物の形状が複雑になったり、延べ床面積が大きくなっても、算出される数値がバラつき難いので、住宅会社の都合で断熱性能を良く見せたり、悪く見せたりすることができません。
なので、平成25年に改正された省エネ基準からは、Q値ではなく、UA値を建物の「断熱性能」や「省エネ性能」の指標として使うようになりました。
更に、建物を建てる場所の基準となる、地域の温度差によって分けられていた「地域区分」も、6つから8つへと細かく分類されるようになりました。
ということは、Q値ではなく、UA値で比較しないと、
建物の「大きさ」や「形状」によっては、建物の「断熱性能」や「省エネ性能」を誤魔化されちゃうかもしれないんですね。
そうなんです。
それと注意してほしいのが、中には「UA値 ≒ (0.37×Q値) - 0.13 という数式で、Q値はUA値に変換できる」とおっしゃる方もいるのですが、
そもそもQ値を利用しているため、建物の「形状」や「延べ床面積」でのバラつきに左右される計算結果になってしまうため、あまり参考になりません。
マイホームの断熱性能では「Q値」を目安にしないといけないことは分かりましたが、どの位の数値を基準にしたらいいんですか?
それが分からないと、比較のしようがないですよね。
確かにそうですね。
では次に、「建物に使用される建材の断熱性能の比較」と「マイホームを建てる地域によるUA値の目安」を紹介しましょう。
【建材別】建物に使用される材料の断熱性能の比較