■ 「換気」と「気密性能(C値)」の関係を知りたい人
■ 家づくりで失敗や後悔したくない人
住宅会社の担当者に、マイホームの気密性能について質問したら、
「今の住宅は24時間換気の給気口があるので、気密性能をUPしてもあまり意味がありませんよ。」って言われたんですけど、本当ですか?
確かに言われてみると、住宅は水槽と違って換気のための給気口があるから、少しぐらい建物に隙間があっても大丈夫なような気もするんです。
それは、気密性能に自信がない住宅会社の常套句ですよ。
もしくは、その担当者が換気計画について、今一つ分かっていないのかもしれませんね。
エッ!
じゃあ、やっぱり本当の意味で「温熱環境のいい家」にするには、気密性能の高さも意識しなければいけないんですね。
実は気密性能をUPすると、住宅の温熱環境だけでなく、換気にとってもイイことがあるんです。
と言うよりも、気密性能をUPしないと、「計画的に換気をしても、あまり意味がない」と言った方が正しいかもしれません。
今回は、住宅の換気計画について説明しますね。
【換気計画の重要性】換気をしないと室内の空気はどうなるの?
住宅のような密閉空間では、「人の呼吸によって排出される二酸化炭素」や「調理などで発生する一酸化炭素」「建材や家具の接着剤から放散されるホルムアルデヒド」など、様々な有害物質によって、刻々と室内の空気汚染が進行しています。
このような状態を放っておくと、
- 炭酸ガス濃度上昇による「酸素不足」や「一酸化炭素中毒」
- 湿度UPによる「結露の発生」や「カビの増殖」
- 様々なニオイが室内にこもる
- 「喘息」や「アトピー」などのアレルギー症の発症
- シックハウス症候群の発症
- インフルエンザなどのウイルス感染の可能性UP
といった弊害が生じ、人体への多大な悪影響が考えられます。
上記のような弊害を防ぎ、快適な室内空間を保つためには、「室内の汚れた空気」と「外部の清浄な空気」を入れ替えるための「換気」が欠かせません。
でも、その住宅営業マンの人は、
「現在の住宅には24時間換気が義務付けられているので、室内で石油ファンヒーターなどを使わない限り、定期的な換気は必要ありません。」とも、言っていましたよ。
厳密に言うと、24時間換気はシックハウス症候群を防ぐために義務付けられた制度なのですが、一定量の換気が期待できるので、人為的な換気の必要性が少なくなったのは確かですね。
しかし、24時間換気だけ行っていれば、「何の心配もない」というわけではありませんよ。
エッ!そうなんですか。
実際に室内で快適に過すためには、どのくらいの換気が必要なんですか?
室内で快適に過すために必要な換気量は?
2003年の建築基準法の改定により、24時間換気が義務付けられたのですが、それに合わせて1時間に必要な換気量についても「0.5 回/h」と定められました。
これは、「住宅の居室にある空気を1時間で半分(0.5)入れ替える」という意味です。
※非居室(廊下・洗面所・トイレ等)が換気経路になる際は、居室として扱う必要があります
例えば、延べ床面積が100㎡(約30坪)、天井高さが2.5mの住宅で考えると、
広さ 100(㎡)×天井高さ 2.5(m)×換気量 0.5(回)×時間 1(h)=1時間毎の必要換気量 125(㎥)
なので、最低でも1時間毎に125㎥以上の空気を入れ替える能力のある機械換気システムの設置が必要となります。
素人には、125㎡なんて言われてもピンとこないですよ。
それって、室内で快適に過すために十分な換気量なんですか?
おっ!いいところに気付きましたね。
実は室内で快適に過ごすために必要な換気量は、「滞在人数」や「過ごし方」などによって変化するんです。
まずは、一般的な例を紹介しますね。
人が室内で平常に過ごしている際に必要な換気量は、「成人1人あたり30㎥/h(炭酸ガス濃度を基準とした場合)」と言われています。
※喫煙者がいる場合は、40~50㎥/h(浮遊粉塵量が増加するため)
先程の延べ床面積が100㎡(約30坪)、天井高さが2.5mの住宅の場合は、24時間換気による1時間毎に必要な最低換気量が125㎥だったので、
1時間毎の必要換気量 125(㎥)÷成人1人あたりに必要な換気量 30(㎥/h)≒4.16(人)
なので、この広さの住宅の場合は、平常状態で過ごす成人が4人までなら、快適に過ごせることが分かります。
なるほど!こんなふうに計算すればイイんだ。
じゃあ、24時間換気の能力以上の換気が必要な場合は、定期的に換気量を増やすようにすれば、快適に暮らせるんですね。
そうですね。
建物の確認申請時には換気計算も義務付けられているので、普通の住宅会社なら、「換気量不足」や「換気量過多」の24時間換気システムを取り付けることもないでしょう。
しかし、「燃焼系機器の使用」や「調理」などに影響されて、室内の空気の状態が変化することも忘れないでくださいね。
ですが・・
これは、「24時間換気が計画通りに正しく行われている場合」に限っての話です。
と言うのも、計画通りに換気しようと思うと、建物にある程度の気密性が必用になるんです。
エ~ッ!
24時間換気にさえ気を付けていればイイんじゃないんですか?
冒頭の、「気密性能をUPしないと、『計画的に換気をしても、あまり意味がない』と言った方が正しいかもしれません。」と話した本当の意味はココにあるんです。
切っても切れない「気密性能」と「換気」の関係とは?ーまとめ
換気を行う目的は、「入り口(給気口)」から清浄な空気を流入させ、「出口(排気口)」から汚れた空気を排出し、「室内全体の空気を正常に保つこと」です。
しかし、上の右図を見ても分かるように、空気の「入り口(建物の隙間)」があり過ぎては、「計画的に室内全体の空気を正常に保つこと」ができません。
どういうことかと言うと、一般的な換気計算では建物の隙間からの空気の「流入」や「流出」は考慮せずに、「完璧な密閉状態(C値が0)」での空気の流れを想定して換気計画を行っているのですが、
図の右側のように建物にたくさんの隙間がある状態では、換気計画で予定していた通りに空気が流れないので、「室内全体の空気を清浄に保つこと」ができないんです。
建物の延べ床面積に対する「隙間の面積」の割合を表す値で、延べ床面積1㎡中に何㎠の隙間があるかを知ることができる
C値が0ならば隙間が全くないことになり、数値が大きくなるほど気密性が低く、温熱環境が悪いことを示す
じゃあ、建物の気密性能が低くて隙間だらけだったら、24時間換気をする意味がないじゃないですか。
「換気計画の給気口」と「建物の隙間」って、全然役割が違いますよね。
それに、計画通りに換気できていないなら、「快適からはほど遠い」わけですし・・
そうなんです。
計画的な換気を行うために「給気口」は不可欠ですが、「建物の隙間」は計画的な換気の邪魔をしてしまいます。
なので、隙間の多い建物は、本当の意味で「温熱環境がいい家」とは言えず、「快適からほど遠い家」になってしまうんですよね。
それじゃあ、住宅営業マンの「今の住宅は24時間換気の給気口があるので、気密性能をUPしてもあまり意味がないですよ。」って説明は何だったんですか!
むしろ住宅営業マンの説明とは反対に、計画的な換気をするためには、「気密性能UPが欠かせない」じゃないですか。
今回の住宅営業マンは、自社の気密性能が低いことを誤魔化したかったのか、計画換気を理解していなかったのかは分かりませんが、
室内で快適に過すために必用な条件として、「清浄な空気の入り口(給気口)」は不可欠でも、「建物の隙間」は不要なんです。
と言うより、不要なだけなら未だしも、「建物の隙間」は計画的な換気の邪魔をしてしまうんですよね。
換気一つとっても、ちゃんと知っておかないと大変なことになるんですね。
理想のマイホームには、まだまだ道のりが険しそうだな~
これからも家づくりの疑問にはドンドン答えていきますから、少しずつ一緒に学んでいきましょう。
そうすれば、きっと理想のマイホームを手に入れられますよ。
次回は、もう少し換気について詳しくお話ししますね。
■ 室内での過ごし方によっては、24時間換気の換気量だけでは不十分なことがある
■ 24時間換気を正常に動作させるためには、一定の気密性能が必要
■ 「換気計画の給気口」と「建物の隙間」の役割は全く違う